第12回DPI障害者政策討論集会の権利擁護分科会「滝山病院は特別ではない~精神科医療を知ることからはじめよう」に登壇しました(12月3日)

滝山病院(天畠大輔事務所撮影)

12月3日、DPI日本会議主催「第12回DPI障害者政策討論集会」の権利擁護分科会「滝山病院は特別ではない~精神科医療を知ることからはじめよう」に登壇しました。天畠からは以下の通り滝山病院問題を考える市民と議員の連絡会議について事務局として報告をしたうえで、ディスカッションでも発言をしました。

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参議院議員の天畠大輔です。連絡会議について報告します。私は昨年7月、参議院議員になりました。厚生労働委員会に所属しています。昨年10月、予算委員会で精神科医療の問題を取り上げたところ、当事者、支援者、活動する人たちからの問い合わせや意見がたくさん届くようになり、問題意識を深めてきました。私は10代の2年間、施設にいました。管理の中で「無力化しかけた」経験から、精神科病院での虐待は人ごとではありません。


まず、連絡会議の概要です。滝山病院からの退院支援の遅れをきっかけに、市民と議員の有志が自然発生的に集まってできた、ゆるやかなネットワークです。発足は8月23日です。

呼びかけ団体は、東京都墨田区のNPO法人こらーるたいとう、家族会の全国組織であるみんなねっと、都内の家族会をまとめる東京つくし会、日本障害者協議会(JD)、DPI日本会議です。天畠大輔事務所が、事務局をしています。


賛同者は11月時点で、約290の個人と団体です。内訳を概数で言うと、当事者団体/社会福祉関係約100、家族会関係約35、個人約30、東京都議会を中心に都道府県議が22、市区町村議会が45、国会議員が私を含めて22人、大学などその他所属が約35。議員は野党系がほとんどです。

活動の目的は大きく分けて二つです。
一つ目は、転院・退院を希望する入院患者の状況を改善するため、転院支援や地域移行支援の拡充等を図る。二つ目は、滝山病院問題の原因究明や再発防止策を考察し、精神科医療等の構造的問題への理解を深める。今までは主に一つ目の目的のもとで活動してきました。

退院支援の経緯・現状をお話します。東京都による退院支援は、5月11日から始まりました。「ルポ死亡退院」が2月25日に放映されてから、約3か月経っていました。相原啓介弁護士はじめ、様々な社会福祉関係の有志が、病院側の改善計画では足りない、退院支援に地域の社会福祉関係の有志を参加させてほしいなど、様々な要望や提案を出してこられたのもあり、東京都が動き出しました。

現在の退院支援の枠組みを簡単にお話します。東京都は、「東京都精神保健福祉士協会」に協力を依頼しました。約20人の交代体制で、患者個別への意向調査と転院調整をしています。2月末時点の患者145人のうち、生活保護受給者ではない約70名が、東京都の支援の対象です。残りの患者は生活保護受給者なので、市区町村が担当です。

対面で患者1人につき1回、人によっては複数回の面会で意向を聞き取っているそうです。退院希望の方は、家族にも意向を確認。そしてまずは地域移行支援の体制が整っている病院に転院してもらい、そこで地域移行の調整をする、という方針を採っています。20人が常に稼働しているわけではなく、本業のある方たちが、時間を捻出し、たとえば週2回2人が午後の数時間、家族に電話かけするなど。かなり小規模な体制でやっているそうです。


具体的な数字を紹介します。
東京都が意向調査した約70人のうち、半分ほどの方が退院や転院を希望しました。残り4分の1の約17~18人が入院を続けることを希望。残り4分の1の約17~18人は意思確認できなかったそうです。


滝山病院の入院患者数は、報道直後の2月末時点で145人、10月末時点で84人です。
2月から10月までで8人の新規入院者がいます。死亡者は29人です。
市区町村の支援や自力などで退院した人は30人ほど。
東京都の支援で転院した人は、11月中旬時点で10人にとどまります。

つまり、5月ころに退院を希望したのに、半年間出られていない人が、25人ほどいます。
これは、体質として虐待・暴行があり、過剰医療も強く疑われている、事件性のある病院からの緊急的な避難とは言えないのではないでしょうか。

そして東京都はすでに、5月ごろに退院を希望したけれどまだ残る25人の情報を、その方々がもと住んでいた市区町村に伝え、退院支援を任せたとのことです。ただどの市町村に任されたかは、患者のプライバシー保護のため公開しないと言います。今、各地の社会福祉団体や支援団体が、各市町村に問い合わせたりして、退院支援すべき患者さんが自分の自治体にいるのか確認、その後支援につなげようとしています。

今の懸念は2点です。
市町村ごとの対応や力量の差で、患者さんが受ける支援にばらつきが出ないか。また、意思表示ができていない方、残りたいと言った方の情報は市町村には伝わっていません。この人たちに粘り強く地域生活の選択肢を示し続ける対応をだれがするのか。東京都は転退院支援は継続すると言っていますが、予算は組まれていません。置き去りにされないか、懸念しています。


なぜ退院支援「遅れ」るのか。ここまでの話から、皆さんは「もっとPSWの人員を増やすべき」「転院先がないなら都立病院が受け入れるべき」などと思われたと思います。その通りです。ではなぜ東京都が、そのような動きができないか、議員の視点からお話させていただきます。虐待を受けた当事者や、ほかの患者たちに対する退院支援、回復のケア、謝罪などを定めた仕組みは、国にも自治体にもありません。

ある国会議員が言っていたことですが、「行政は守る、議員は攻めるのが仕事」です。議員は法律や条例を作る、つまり仕組みをつくります。行政は基本的に決まった法律や条例の中で日々の運用をします。今回の滝山病院からの退院支援は、東京都の自主的な財源で、自主的にものごとを進めるしかありません。

また、仕組みがないことで、行政を監視する役目を持つ議員の側も、退院支援への注視が薄くなりがちです。実際に、これまでの滝山病院事件に関する国会質疑は、院長の保険医指定の問題や、虐待発見のための抜き打ち検査など、すでにある仕組みを突くものでした。議員に問題意識がなければ、行政に対し、外部から圧力がかかることもありません。この悪循環を断ち切るためには、外からの力が必要です。


そこで連絡会議ではまず、行政に対する「外からの声」を最大化しようと試みました。具体的には、賛同者をできるだけ多く集めました。ただ医療関係者や、与党議員に対しては、時間と力が及びませんでした。市区町村議員さんには、どの自治体から何人滝山病院に入院しているか、という630調査のデータを示して賛同を呼びかけました。これは都内で長年、630調査の病院別データを東京都に情報公開請求してきた、東京都地域精神医療業務研究会(ちぎょうけん)から、いただいたデータです。自分の自治体に関係あることとわかると、具体的にできることがある、とぐっと関心を持ってもらいやすくなります。

まずはキックオフ勉強会を2回開きました。地元の東京新聞に取り上げられたことで、東京都はプレッシャーに感じていたようです。この勉強会を受けて、目黒区、小金井市、武蔵野市の議員が議会質問をし、また小金井市議会では意見書が賛成多数で可決されました。


10月10日に、ワンデーアクションを行いました。厚労省、東京都、八王子市、そして滝山病院。それぞれが問題の解明、指導、改善に役割を持っていますから、退院支援に限らず必要事項を要望しました。どの現場にも、国会から基礎自治体までの議員、そして市民の方々合計20~30人に来ていただき、意思表示ができました。議員団による病院視察は断られました。最後には都庁で記者会見を開き、10ほどのメディアに掲載されました。一定の成果はありましたが、実際に退院支援がスピードアップしたわけではありません。

滝山病院問題は、今日の分科会の趣旨文にある「強制入院は行われやすいが、退院は進んで行われない」の延長上にあります。

今後の話に移ります。滝山病院問題は今日の分科会の趣旨文にある、「退院は進んで行われない」というのは、その通りです。いくら退院支援を申し出る人がいても、病院側が首を縦に振らないと、外部の支援者は入れません。虐待暴行のあった病院でさえも、行政側も強制ができません。また先ほどお話したように、虐待があったとしても、必ず退院意向を聞くといった仕組みはありません。こういった今の仕組み、行政の対応を踏まえて、連絡会議の今後の活動についてです。

基本的には、退院支援の状況に応じて、現場のソーシャルワークの側面支援になる市民と議員の動きを企画したいと考えています。ちょうど今週28日には、東京都の来年度予算案について、要望書を出しました。外国特派員協会での会見など、外からの声をより広げていく必要もあると考えています。


連絡会議からは少し外れますが、全国で散発する虐待事件からの退院支援については、全国の当事者、支援者の間で経験や情報の共有が必要と感じます。今日を機会に、そのような場をつくれたらと思っています。また、滝山病院問題に限らず、議会の活用は有用です。議員ができることは、議会での質問だけではありません。文書でのデータ要求や、議会から国への意見書、陳情・請願などいろいろな仕組みがあります。まだの方は、連絡会議にぜひ賛同してください。終わります。

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ディスカッションテーマ:日本の精神科医療を改善するために、どういう仕組が必要か。ベッドを減らすことを含め。

天畠)聞こえの良い「役割分担」の枠をなくしましょう。日本の精神科医療には改善すべきことがたくさんありますが、私からは政策形成の仕組みについて発言します。

連絡会議を数か月やってみて、特に障害分野に関しては市民と議員の連携をもっと深めるべきだ、と感じました。議員の視点から言うと、今回連絡会議に賛同くださった議員には、これまで障がい分野にあまり関わっていなかった人もいます。たくさんの団体や個人の活動、意見があることがわかり、発言の重みが増した、心強かったと感じた議員は多いのではないでしょうか。少なくとも私はそうでした。

また、市民と議員の連携があれば、集合知が生まれやすいと感じました。精神科医療には、患者、看護師、精神保健福祉士、医師、家族、支援者、政治家、行政などなど、様々な人が関わっています。今回連絡会議をやってみて、当事者である私が普段あまり接することのない、家族会や、精神保健福祉士協会の人とも話しました。立場が違うのでひりひりすることもありますが、自分の発言や行動を考えるときに、いろいろな人の顔が浮かぶようになりました。

一方で、同じ精神科医療に関わっていても、いつもはばらばらの場所にいて、ばらばらにものを考えています。それだけやるとどうなるか。


「行政から委託されたから、その範囲で出来るだけのことをやる」
「議員は市民の声がないと動けない」
「社会福祉団体に出来るのは目の前の患者さんを支えることだけ」


それぞれもっともらしいのですが、今ある枠組みを変えるには不十分です。議員も、行政も、市民も、「自分の役割」とされるものからいったん抜け出るためには、やはりすぐ近くに違う立場の人がいて、話せる状態があるべきです。市民と議員の連携が各地で起こる中で、精神科医療の改善の道が現実味を帯びてくると思います。

そして、制度を変えるには障害当事者議員が必要、とよく言われますが、こういった活動の中からこそ、次の議員と、それを支えるチームが育ち、実現していくのだと思います。