【2023年通常国会ハイライト⑥】「制度の狭間」に取り残された1型糖尿病患者への支援を提起しました

1型糖尿病を知っていますか

1型糖尿病をご存知でしょうか。日本における小児期発症患者の年間発症率は10万人に1.5~2.5人、糖尿病全体のうちの数%にすぎません。

血糖値を下げるホルモンであるインスリンを体内で作れなくなる病気です。ウイルス感染などをきっかけに、膵臓のインスリン生産細胞が破壊されることで発病します。人はインスリンにより体に糖分を取り込まなければ生きていけませんから、1型糖尿病はインスリン製剤を外部から補充しなければ、確実に数日で死に至る、緊急性のある難病です。

しかし、1型糖尿病は様々な制度からこぼれ落ちています。難病法では指定難病の対象になりませんから、成人すると医療費補助は何もありません(20歳未満の患者には小児慢性特定疾病医療費助成や特別児童扶養手当があります)。障害者総合支援法では、障害者手帳がなく指定難病でもないため対象ではありません。障害者雇用促進法では法定雇用率の対象ではありません。


しかも糖尿病全体には、自己管理が出来ていないなどの偏見が、当事者を苦しめています(もちろん下記のチラシのような、偏見を取り除く取り組みもあります)。これは、1996年頃から国が糖尿病などを「生活習慣病」という表現を用いたことも一因として考えられます。天畠事務所では、当事者の方からの具体的な問い合わせをきっかけに、患者当事者の方々からヒアリングを重ね、2023年通常国会で政府に課題提起をしました。

出典:日医ニュース

「生活上の困難」を障害基礎年金の判定基準に

1型糖尿病患者が抱える大きな問題の一つが、障害基礎年金の不支給です。訴訟にもなっています。1型糖尿病患者の西田えみ子さんが、障害基礎年金を不支給とされたのは不当だと国を訴えました。東京地裁は、国の不支給処分を違法とし、障害等級2級相当額の支給を命じる判決を言い渡しました。弁護団とともに4年もかけて、1型糖尿病により家事ができないこと、仕事がままならないことなどの証拠を集め、言葉を尽くすことで裁判所にやっと通じた結果でした。

ほかにも大阪などでは、2016年の糖尿病認定基準改正により、障害基礎年金の支給を突然打ち切られた患者たちがいます。国からは理由も示されませんでした。翌年には、そのうち9人が不支給処分の取消しを求め、国に対して集団訴訟を起こしました。現在も大阪高裁で闘いが続いています。

1型糖尿病は低血糖も高血糖も防ぐために、一生、365日24時間、血糖コントロールという医療行為が必要です。どうしても避けられない血糖値の乱高下に伴う異様な疲労感、吐き気、目まい、痛みは目に見えず、数字で表せません。

夜間低血糖による明け方の低血糖昏睡は、対処できなければ死に至ります。

やっと起き上がっても、低血糖明けの体では家事もままならず、掃除や洗濯が週に1回もできないこともあります。

仕事は、遅刻、欠席が増えてしまうため就労が難しい。

「病気が治ったら来てください」と採用担当者に門前払いされる。

職場で低血糖発作を起こすたびに解雇され、低所得から抜け出せない。

職場での意識喪失は解雇のおそれがあるため、やむなく血糖を高く維持せざるを得ず、合併症の眼底出血を引き起こす。

医療費が払えず、治療や検査を控え、命を脅かされる。

1型糖尿病によって就労や日常生活に支障が出ているのに、障害基礎年金が支給されにくいのは、「生活上の困難さ」を測る指標が不明確だからです。1型糖尿病患者への支援では、障がいの「社会モデル」(「障害」は個人の心身機能の障害と社会的障壁の相互作用によって創り出されているものであり、社会的障壁を取り除くのは社会の責務であるとする考え方)が適用されていないとも言えます。2023年通常国会の質疑ではこの点を追及しました。

天畠「現在、精神障害の認定基準のフォーマットでは、日常生活状況の項目が多い上に認定に直結します。一方で、糖尿病のフォーマットは、現症時の日常生活活動能力及び労働能力の項目のみです。自己申告の「病歴・就労状況等申立書」では項目が少なく、参考程度にしかなりません。「腎疾患、肝疾患、糖尿病の障害用の診断書」の記載要項を、精神障害と同様に、「生活上の困難さ」をより考慮できる仕組みを検討すべきです。加藤大臣、いかがですか。

厚労省政府参考人(宮本直樹君)「お答え申し上げます。1型糖尿病の障害年金の申請に当たっては、糖尿病申請様式の中にある一般状態区分表に、主治医が本人の問診の結果等も踏まえ患者の日常生活の制限の状況等を記載することとしているほか、補足資料の「病歴・就労状況等申立書」には、着替え、食事、トイレなどの日常生活の状況について本人に直接記入していただくこととしており、当事者の日常生活の状況等については診断書の記載の内容や本人の申立てにより把握することとなっております。その上で、本人の状況をより一層正しく伝える方法については、今後とも様々なご意見を伺い、検討してまいりたいと考えております」

天畠「それだけでは不十分です。認定基準や医師の診断書だけによる現在の審査は、限界があります。たとえば2015年、厚労省の糖尿病の障害年金に関する専門家会合では、出席した糖尿病認定医が「医学的数値の背景にどういう問題があるのかを把握することは困難」と吐露していました。現状では、認定の根拠が医学的数値と5択しかない一般状態区分表しかないことが背景にあります。

やはり、生活実態が正しく伝わる仕組みに変えるべきではないでしょうか。自己申告の「生活上の困難さ」は、参考程度ではなく、認定の判断に考慮されるようにすべきだと重ねて申し上げます」

2023年3月9日 厚生労働委員会質疑「『制度の狭間』に取り残された1型糖尿病 今必要な施策とは」

質疑ではこの他、1型糖尿病の正しい知識の普及啓発や、医療費補助の乏しさ、就労支援の必要性を取り上げましたが、課題が解決したわけではありません。今後も政策動向を注視してまいります。特に、1型糖尿病患者をはじめとする難病患者や発達障がい者など手帳を所持していない人の雇用率制度における取扱いについて、政府は現在、就労困難性の判断のあり方に係る調査研究(※)を進めているので、この結果や政策動向には是非みなさんにも注目いただきたいです。(文責:秘書 篠田恵)

※「難病患者の就労困難性に関する調査研究」:調査実施期間が令和3年度~令和5年度、「事業主が採用後に障害を把握した発達障害者の就労継続事例等に関する調査研究」:調査実施期間が令和4年度~令和5年度