2025年6月5日 厚生労働委員会質疑(国民年金法等改正案審議)「年金積立金は誰のため 年金生活者?株を持つ資産家?」

〇天畠大輔君

れいわ新選組の天畠大輔です。日本の年金生活者には「生存権」が保障されていません。代読お願いします。

厚生年金の加入者である2号被保険者は、基礎年金の1階部分と労使折半で積み上げる報酬比例の2階部分を合わせて、男性が平均月額16万7,217円、年俸、年額で200万6,604円、女性が平均月額10万9,154円、年額で130万9,848円という水準です。女性は男性の3分の2にも満たない差別状態です。

厚労大臣、年金制度を改革するなら、まず第一に、この男女間格差の是正に向けて数値目標と締切りを設定して取り組むべきではないですか。

〇国務大臣(福岡資麿君)

公的年金制度におきましては、基本的に制度上の給付の男女差はございません。年金額は現役時代の収入に基づく保険料の納付実績に応じて決まるものでございます。

これまでも、男女雇用機会均等法の遵守の徹底であったり男女間賃金差異の是正を図るほか、今回の法案にも被用者保険の適用拡大を盛り込んでいるところでございまして、女性の方々も含めまして、厚生年金の加入期間が延びることで年金額の増加にもつながると考えております。

そのうえで、所得であったり年金額の低い高齢者の方々には年金生活者支援給付金制度を設けておりまして、こういった施策などによりまして、高齢者の方々の暮らしが安定するように引き続き支援を行ってまいりたいと思います。

〇委員長(柘植芳文君)

天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

〇天畠大輔君

先ほど倉林委員も指摘していましたが、まず男女間の賃金格差を解消してこそ公正な年金と言えるのではないですか。大臣、お答えください。

〇国務大臣(福岡資麿君)

男女間の賃金差異は様々な背景が積み重なった結果指標という意味合いを持つものでございますが、我が国におけるその最も大きな要因は女性管理職比率の低さであったり男女間の勤続年数の差異であり、これらは、男女共同参画社会基本法に基づく男女共同参画基本計画におきまして、各役職段階に占める女性の割合、第一子出産前後の女性の継続就業率といった今成果目標を定め、政府全体として改善に向けた取組を進めているところでございます。

〇天畠大輔君

代読します。国民年金生活者が受ける満額は、月6万9,308円、年83万1,696円です。令和5年度末現在、671万人の人々がこの水準またはそれ以下で暮らしています。総務省がまとめた「家計調査 家計収支編」によると、単身世帯の1か月間の平均消費支出額は2024年時点で16万9,547円に上っています。国民年金生活者は、満額受給でもひと月10万円以上足りません。

日本の年金生活者は基本的人権たる「生存権」を踏みにじられながら暮らしています。厚労大臣、いかがですか。

〇国務大臣(福岡資麿君)

老齢基礎年金は老後の生活の柱でございますが、それだけで老後の生活のすべてを賄うものではなく、現役世代に構築した生活基盤であったり貯蓄等と組み合わせて老後の生活を送るという考え方に立って給付の設計が行われています。

そのうえで、日本国憲法第25条第1項ではいわゆる「生存権」について規定し、第2項において国の努力義務が規定され、生活保護その他の施策が相まって実現されるべきものと解されているところ、今ほど申し上げました老齢基礎年金の考え方に照らしましても、年金の水準をもって憲法の規定に抵触するものではないと考えております。

そのうえで、様々な事情によりまして低所得であったり無年金・低年金となっておられる高齢者の方々に対しましては、公的年金のみならず社会保障制度全体で総合的に支援していくことが重要でございまして、年金生活者支援給付金の支給などによりまして経済的な支援を行ってまいりたいと思います。

〇委員長(柘植芳文君)

天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。〔委員長退席、理事三浦靖君着席〕

〇天畠大輔君

年金生活者支援給付金はたった5,000円レベル。全然足りませんよね。代読お願いします。

金融庁は、2019年、夫65歳以上、妻60歳以上の無職夫婦世代が公的年金のみで生活する場合、老後30年間で約2,000万円の不足が生じると発表しました。2025年の現在、不足額はいくらですか。金融庁、お答えください。

〇大臣政務官(西野太亮君)

委員にご指摘いただきました2019年に金融審議会「市場ワーキング・グループ」が取りまとめました報告書でございますけれども、この報告書では、貯蓄そして退職金などに触れることなく、高齢世帯の収入・支出の平均値を用いた単純計算で、あたかも、公的年金を受け取ったとしても、生活費として老後30年間で2,000万円を不足するかのような表現をしたものでございまして、国民の皆様方の誤解を招く不適切な表現であったと考えております。

したがいまして、金融庁といたしまして、当時、国民の皆様におわびを申し上げた上で、この報告書を正式なものとして受け取らないことを決定したところでございます。したがいまして、その後、類似の計算は行っておりませんので、委員のご質問、お尋ねの額についてお答えすることはできないということでございます。

〇天畠大輔君

代読します。金融庁、国民にどのような誤解を与えたのですか。また、どの部分が不適切だったのですか。お答えください。

〇大臣政務官(西野太亮君)

今し方申し上げましたけれども、高齢世帯と一口で言いましても、高齢世帯のライフスタイルは多様でございます。また、貯蓄、退職金、私的年金などもあります。報告書では、こうしたことをすべて無視した上で、高齢世帯の収入、支出の平均値を用いた単純計算をしております。その結果、あたかも、公的年金を受け取ったとしても、生活費として老後30年間で2,000万円不足するといった国民の皆様の誤解を招いてしまったものだと認識しております。

こうした平均値を用いた単純な計算には意味がなく、ミスリーディングであり、不適切であったというふうに考えているところです。

〇天畠大輔君

退職金や貯蓄用、家や車のローンの頭金や月賦返還に充てるなどということはみんなやっています。日々の暮らしに回らないということも多いと思います。そんなことすら考慮せずに、金融庁はいわゆる「単純計算」したのでしょうか。計算式をお示しください。

〇大臣政務官(西野太亮君)

計算式について申し上げますと、当時の報告書におきましては、家計調査における高齢者世帯の平均的な1か月あたりの収入と支出の単純な差でございます55,000円に30年間分、360か月を掛けるという単純な計算を行っていたものでございます。繰り返しになりますけれども、不適切な計算であったというふうに考えております。

〇天畠大輔君

代読いたします。国民年金生活者が受け取る満額は月6万9,308円です。この金額で暮らしていけないのは明らかです。金融庁、現時点の計算でいくら足りないのか、答えてください。

〇大臣政務官(西野太亮君)

繰り返しで大変恐縮でございますけれども、先ほど来申し上げておりましたとおり、こうした単純計算で国民の皆様の誤解を与えるようなやり方というのは不適切だというふうに考えておりますので、こうした不足額について改めてお示しすることはできないということでございます。

〇理事(三浦靖君)

天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

〇天畠大輔君

政府の怠慢さにびっくりしました。代読お願いします。

厚労大臣、公的年金のみで生活する高齢夫妻の老後30年間の不足額はいくらですか。

〇国務大臣(福岡資麿君)

高齢者の方が老後の生活に必要な収入や資産につきましては、年金の受給額、また現役時代に築いた貯蓄等の資産、また持家であったり賃貸などの居住形態、また高齢期における就労状況などによって必要な水準が様々でありますため、老後の生活に必要な所得であったり資産を一律にお示しすることは困難だと考えております。

〇天畠大輔君

代読します。公的年金だけで暮らす年金生活者が老後に必要となる額を試算して示すのは厚労省の責務ではないのですか。大臣、お答えください。

〇国務大臣(福岡資麿君)

先ほどとちょっと重なりますけれども、老後に必要な所得や資産については、高齢期の方々の生活は今多様でございまして、それぞれの方が望ましいと考える生活水準であったり、働き方の希望・収入・資産の状況は様々でありますことから、老後の生活に必要な所得であったり資産を一律にお示しすることは困難だと考えています。

〇天畠大輔君

代読します。金融庁がこの「老後資金2,000万円問題」を発表した2019年、国民、市民の大きな怒りが爆発しました。毎月5万円不足しているから、30年間、360か月で1,800万円、これを四捨五入して2,000万円必要だというのです。この国の年金政策が小学生の算数レベルで決められていることが明らかになりました。
〔理事三浦靖君退席、委員長着席〕

このような政府のもと、大きな苦しみを味わうのが年金生活者です。具体的事例を3つ紹介します。
東京都内で夫婦合わせ12万円の年金で暮らす74歳の女性は「介護保険料、国民健康保険料、医療費、デイサービスなどを引くと9万円しか残らない。もしどちらか1人が倒れればもう生きていけない」と、強い不安を抱えながら生きています。

また、北海道に住む80歳の年金生活者は月8万円の年金で暮らしています。持家に住んでいるため家賃はかからないものの、築40年にもかかわらず修繕もできない状態です。ここ7、8年は新しい服も買えず、食事は1日2回だそうです。

さらに、千葉在住の74歳の女性は、昨年夫を亡くし、自分の僅かな年金と遺族年金で細々と暮らしています。少し気を緩めると赤字になり、僅かな貯金から穴埋めしているそうです。彼女はこう言っています。「健康で文化的な老後を送るのは今の日本ではぜいたくな願いなのでしょうか」

厚労大臣、このような方々に対してどんな言葉をかけますか。

〇国務大臣(福岡資麿君)

すみません、ちょっと今1回聞いただけでご質問の趣旨が理解できませんでしたので、もう1回端的にその最後の部分だけおっしゃっていただけますか。

〇委員長(柘植芳文君)

じゃ、天畠先生、もう一度質問お願いします。

〇天畠大輔君

低年金で暮らす様々な方々が全国各地でいるということです。このような、今示されたお三方、三例紹介しましたけど、この方々に対して厚労大臣としてどのような声をかけますかという質問です。

〇国務大臣(福岡資麿君)

低年金で暮らしていらっしゃる方がいらっしゃるということは十分承知をしております。その方々に対しましては、先ほど来申し上げましているように、公的年金のみならず、社会保障全体でお支えをしていくということが大変重要であるというふうに考えておりまして、年金生活者支援給付金の支給、これだけではなく、様々な医療保険、介護保険による保険料軽減とかも含めて、様々な施策を総合的に行いながら対応をしてまいりたいと考えています。

〇委員長(柘植芳文君)

天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

〇天畠大輔君

制度の説明を聞いても腹は膨れません。代読お願いします。

厚労省年金局が7年前に出した資料ですが「諸外国の年金制度の動向について」によると、日本の義務的加入年金の所得代替率は34.6%、全額公的年金です。同じように全額公的年金で賄っている国では、イタリア83.1%、フランス60.5%、カナダ41.0%と、大きな差を付けられています。

このような国際比較から見ても、日本の年金レベルの低さは政府の無策と怠慢が大きな原因なのではないですか。大臣、お答えください。

〇国務大臣(福岡資麿君)

諸外国の公的年金制度との比較にあたりましては、高齢化率であったり保険料水準といった前提条件が国ごとに異なりますから、単純に比較して評価することは適切ではないと考えております。

ご指摘の所得代替率が高い国につきましては、先ほど例としてイタリアとかフランスを挙げていただきましたが、例えばそのイタリア、フランスでいうと、保険料率が33.0%とか27.8%と、日本よりかなり高い水準に設定をされております。そういったところにも留意して考える必要があると考えております。

また、日本におきましては、平成16 年の改正におきまして、現役の世代の負担が過重なものとならないように保険料負担に上限を定めまして、その範囲で給付を行う仕組みを導入するなど、給付と負担のバランスを確保することに継続して取り組んでおりまして、この給付水準のみを比較して無策と評価をされることは適切ではないのではないかと考えています。

〇天畠大輔君

代読します。現役男性の平均手取り賃金をモデルにしていること自体、女性をないがしろにしています。男は仕事、女は家庭という性的役割分担の差別意識を政府自らが助長していませんか。厚労省、内閣府の順にお答えください。

〇国務大臣(福岡資麿君)

年金のこの給付水準を示します「所得代替率」は、現役男性の平均的な手取り賃金に対する「モデル年金」の金額との比較としておりまして、これが将来にわたって50%を上回ることとしていることから、これまでのその継続性の観点からも、引き続きこの算出方法でお示しをしていく必要があると考えています。

他方で、ライフコースが多様化する中で、モデル年金を受給するような世帯だけではなく、様々な方の年金の給付水準をお示しすることは大変重要だと考えています。

こうした観点から、昨年の財政検証では新たに個人単位の推計も行ってございます。また、年金部会でのご意見も踏まえ、本年4月の年金額の改定におきましては、モデル年金に加えまして、個人単位であったり、過去の働き方に応じた複数のパターンの年金額を公表しております。今後も、様々な世帯であったりライフコースからイメージしやすい年金額の示し方を検討してまいりたいと思います。

〇副大臣(辻清人君)

お答えします。ただいま厚労大臣から答弁がありましたとおり、年金の給付水準に係る考え方には一定の合理性があるものと考えていますが、一方で、委員もご懸念のとおり、専業主婦世帯の減少や共働き世帯、単独世帯の増加など、時代とともに家族の姿が変化し、個人のライフスタイルや働き方が多様化しているのもまた事実です。

公的年金制度をはじめとする社会保障制度等については、こうした変化・多様化を踏まえ、固定的な性別役割分担意識や性差に関する偏見等を反映したものとなっていないか不断の見直しを行うことが重要であると考えています。

〇天畠大輔君

次に行きます。純金融資産保有額1億円以上の「富裕層」並びに「超富裕層」は現在165.3万世帯で、2021年の148.5万世帯から11.3%も増加しました。その富の総額は469兆円で、1世帯あたり2.8億円に上ります。

また、所得額100億円を超える人の数は43人で、その総額は1兆5,429億5,700万円です。この金額、1兆5,429億5,700万円を、国民年金生活者の満額、年間83万1,696円になると、一体何人分になるでしょうか。185万5,193人分です。上位たった43人の総所得が、岡山県全員と同じ数の国民年金生活者が1年間に受け取る年金支給額、しかも満額の場合です、これと同じなのです。

このような「超格差社会」を厚労省はどう受け止めていますか。また、具体的な是正策はなんですか。

〇国務大臣(福岡資麿君)

格差であったり、貧困の拡大と固定化による社会の分断を回避するということは重要だと考えております。我が国の社会保障制度は、疾病であったり老齢といった不確実性に対して社会全体で支え合う重要な社会インフラとして、こうした格差の是正であったり社会の安定をもたらすと認識をしております。

そのうえで、我が国のこの公的年金制度は、定額の基礎年金と報酬比例の厚生年金を組み合わせることで現役時代に所得が低かった方の年金を手厚くしておりまして、高齢期の所得を増やすことで貧困を防止する所得再配分の機能を有しております。

加えまして、今回の法案においては、厚生年金に加入し、より手厚い年金を受け取ることができる被用者保険の適用拡大であったり、所得再配分機能の強化にも資する標準報酬月額の上限引上げといった改正を盛り込んでいるところでございます。

〇委員長(柘植芳文君)

天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

〇天畠大輔君

額に汗して納めた年金を株に流用して、金持ちが太っていませんか。代読お願いします。

日経平均株価は、2015年末の終値が1,900飛び34円でしたが、2024年末には3万9,895円でした。9年間で2.1倍です。平均的な個人投資家が9年間で株式資産を倍以上に増やしたということです。

GPIF、年金積立金管理運用独立行政法人は、保険料として人々から集めたお金を250兆円も積み立てて、国内外の株式や債券に流用しています。2023年度の収益率は資産全体で22.6%を記録しました。GPIFは世界最大の機関投資家です。株で大もうけする資本家、資産家を支えているのです。

このGPIFと日本銀行を合わせた公的マネーは、東京証券取引所一部上場企業1,970社のうち実に4分の1にあたる474社で筆頭株主となっていると2016年8月29日付けの日本経済新聞は報じています。まさに官製相場そのものです。庶民から巻き上げた金で八百長相場を形成し、大金持ちを優遇しています。

日本の年金制度は、賦課方式といいながら、250兆円もの積立金をプールして、GPIFという巨大な鯨を飼い、富裕層が更に金持ちになるための株価誘導に使っているというのが実態ではないですか。大臣、お答えください。

〇国務大臣(福岡資麿君)

公的年金制度は、賦課方式を基本としながらも、一定の積立金を保有しておりまして、将来世代の負担が過重なものとならないように、保険料の上限を固定しつつも、積立金を長期的に年金給付に充てることで将来の給付水準の確保を図っております。

そのうえで、この年金積立金の運用については、厚生年金保険法等によりまして、専ら被保険者の利益のために、年金財政の安定に資することを目的として行うこととされていることから、ご指摘のあった、株価誘導とのご指摘というのはあたらないと考えております。

引き続きまして、GPIFにおいて、専ら被保険者の利益のために、長期的な観点から安全かつ効率的に年金積立金の運用を行うことが重要だと考えております。

〇天畠大輔君

政府に年金を語る資格はありません。質疑を終わります。