2025年6月3日 厚生労働委員会質疑「テーマいろいろいきます!治療と仕事の両立 ガイドラインに一言/国庫負担基準仕組みの是非を問う/就労困難性による追加の障害認定に向けた議論を」

〈労働施策総合推進法等改正案への反対討論〉

〇委員長(柘植芳文君)

労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律案を議題として、質疑を行います。──別にご発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。これより討論に入ります。ご意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。

〇天畠大輔君

実効性なき改正には反対です。

代読いたします。私は、れいわ新選組を代表して「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律案」に反対の立場から討論いたします。

本法案は、ハラスメント防止、職場環境の改善、女性活躍の推進など、重要な目的を掲げています。その趣旨には私も賛同します。

しかしながら、本法案は、根深い差別や深刻なハラスメント問題に対して「周知・啓発」という緩やかな措置を規定するにとどまり、具体的・実効的な禁止措置や積極的是正措置を講じていません。実効性なき改正は重大な人権侵害の放置につながります。過去・現在・未来にわたり、何十万、何百万という人々の苦しみを看過することになるからです。

私は、これまでの質疑の中で、データを根拠として示しながら、ハラスメントに対し、現行の防止規定では抑止効果を持たないことを明らかにしました。特に深刻なのが「就活セクハラ」です。厚労省の調査では約3割の学生が被害を経験しているにもかかわらず、本法案は明確な禁止規定を設けず、具体的措置として「謝罪」などの事後対応を示しています。これでは被害の継続を前提とした対応であり、極めて不誠実です。

委員の皆様に問います。ご自身のご家族や大切な人がハラスメントの被害者になったとき、このような対応で本当に納得できますか。とりわけ今回新設される労働施策総合推進法改正案第4条第4項は、抽象的な理念規定にすぎず、実効性のかけらも見当たりません。こうした曖昧な内容で人権侵害を防ぐことはできません。我が国の人権保障が後退していることに対し、政府及び福岡大臣はどのように責任を取るのでしょうか。

ILO第190号条約は、職場における暴力・ハラスメントの禁止と実効的な措置を求めています。日本政府は2019年に採択に賛成したものの、いまだ批准しておらず、昨年のILO懇談会でも実務者との対話は行われていません。国際的責務を果たす意思があるのか疑問です。

一方、カスタマーハラスメント対策については、線引きが曖昧なままでは、障がい者による合理的配慮の要請までも「カスハラ」と誤認されかねません。指針の策定には必ず多様な当事者の参画が必要です。

以上を総括し、今回の法改正審議により、政府の曖昧で無責任な姿勢と、憲法に定められた基本的人権の保障、法の下の平等が守られていないことが明白になったことを指摘し、反対討論といたします。私たちは、この審議の経過を決して忘れません。国民の皆さんにも政府の対応を記憶し続けていただきたいと強く訴えます。

〈一般質疑〉

〇天畠大輔君

れいわ新選組の天畠大輔です。まず、先ほど委員会で可決された労働施策総合推進法から、治療と仕事の両立支援について伺います。

政府は、治療と仕事の両立支援をそれぞれの事業場において推進するため、ガイドラインを作成・周知しています。そして、本法においては、両立支援を更に促進するため、本ガイドラインを参考に指針を策定するとしています。

2024年8月14日付けの東京新聞夕刊の記事に、潰瘍性大腸炎やクローン病など炎症性腸疾患患者の治療と仕事の両立について、当事者の生の声が取り上げられていました。記事の中では、本人が職場に配慮事項を伝え、自分で居場所をつくる「トリセツ」の活用を進める支援団体の取組が紹介される一方「仕事に不利になる」として職場に伝えるのをためらう声も取り上げられていました。

本人が配慮事項を伝えることはもちろん重要ですが、まずは相談後に不利な扱いが生じる不安を解消することが先決と考えます。そういった意味では、治療と仕事の両立における相談内容によって働く人に不利益が生じない職場の環境整備について事業主側に対策を求める規定を指針に盛り込む必要があると考えます。大臣の見解をお聞かせください。

〇国務大臣(福岡資麿君)

両立支援の申出をしたことであったり相談内容が原因で労働者の方々に不利益が生じないようにするとのご指摘は大変重要と考えています。現行のガイドラインにおきましては、管理職等への研修による意識啓発や相談窓口の明確化など、申出しやすい環境を整備すること、就業継続の希望や配慮の希望を聴取し、十分な話合いを通じて本人の了解が得られるように努めること、疾病の罹患をもって安易に就業を禁止せず、主治医や産業医の意見を勘案し、できるだけ必要な措置を講じて就業の機会を失わせないように留意することを示しております。

法案の成立後には、現行のガイドラインを参考に新たに指針を策定することになりますので、その中で、こうした労働者と事業者の話合いについても、今後、労使や有識者から成る検討会で検討していきたいと考えております。

〇委員長(柘植芳文君)

天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

〇天畠大輔君

ガイドラインにしっかりと明記してください。代読お願いします。

次に行きます。今年3月18日の参議院予算委員会で私は、障害者総合支援法に基づく訪問系サービスに設けられた「国庫負担基準」は違法ではないかと質問しました。大臣からはこのような答弁をいただきました。

「国庫負担基準は、利用者個人のサービスの上限ではなく、市町村単位の国庫負担の上限であり、同じ市町村の中でサービスの利用の少ない方から多い方に回すことが可能な仕組みとなっておりまして、各市町村に対しても国庫負担基準が個々の利用者に対する支給量の上限となるものではない」こういうご答弁でした。

しかし、おかしいと思います。この少ない方から多い方へ回す仕組みがあることで、障害福祉サービスを必要としながらもたどり着けていない人に対する自治体からの積極的な情報提供といった活動を抑制したり、支給量が少なめの人の支給をそのままにしておこうといった自治体の支給調整を招きかねないと考えますが、大臣、いかがでしょうか。

〇国務大臣(福岡資麿君)

障害者総合支援法では、国の費用負担を義務化することで財源の裏付けを強化する一方、財源に限りがある中で国費を公平に配分し、市町村間のサービスのばらつきをなくすために、訪問系サービスの市町村に対する国庫負担の上限として国庫負担基準を定めております。

一方、障害福祉サービスの利用につきましては、障害者総合支援法上「市町村は、障害者等の福祉に関し、必要な情報提供や相談に応じるなどの業務を行う責務を有するとともに、障害者等から支給申請があった場合には、介護を行う者の状況や障害者の置かれている環境、障害福祉サービスの利用意向等を勘案して支給の要否の決定を行うこと」とされております。

各自治体に対しましては、障害者等から障害福祉サービスの利用相談があった場合には、差別的な言動やサービスの利用を拒むような対応をすることなく、サービスの利用について丁寧に説明を行うなど障害者に寄り添った対応を行うこと。国庫負担基準が個々の利用者に対する支給量の上限となるものではなく、支給決定にあたっては、利用者一人一人の事情を踏まえ、適切な支給量を決定することなどを周知しておりまして、引き続き、こういった内容について、関係課長会議の場などを活用して徹底を図ってまいりたいと思います。

〇委員長(柘植芳文君)

天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

〇天畠大輔君

長い答弁なのに結局答えになっていません。代読お願いします。

そもそも、障がい者一人一人はそれぞれの状態に応じた訪問系サービスを受ける権利があります。支給決定にあたって一人一人の事情を踏まえて適切な支給量を決めるというのは当然です。それができていない状況だから、支給時間数がまったく足りずに訴訟も起こっているのです。

市町村によって障がい者への支給量に格差が生まれている今の状況を大臣は是正するおつもりはあるのでしょうか。通告なしですが、簡潔にお願いいたします。

〇国務大臣(福岡資麿君)

まず、その必要なサービスが提供されるということの必要性については十分理解をしております。そのうえで、厚生労働省としては、市町村の窓口において差別的な言動や差別の利用を拒むような対応を取ることなく、障がい者の方々に寄り添った対応をしていただくよう関係課長会議などの場を活用して周知徹底を図ることとしているものでございまして、引き続きその徹底に努めてまいります。

〇委員長(柘植芳文君)

天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

〇天畠大輔君

自治体にお願いするだけでは是正されません。再考を求めます。代読お願いします。

次に行きます。先々週5月23日、重度障がいの当事者らが会場・オンライン合わせ280人強集まり、障害者総合支援法厚労省告示523号の改正を求める集会が開かれました。国会議員は、自民党の方も含め、ご本人出席が20人ほどありました。

その集会の中で、こんな事例がありました。自営業の視覚障がい者の方が、買物にヘルパー同行を頼む際「買うはさみは仕事に使うのか、個人で使うのか」などとヘルパーを通して毎度事業所に聞かれ、事業所が市役所に確認していたそうです。

この個別の買物が同行援護の対象かどうか、また事業所や行政の対応が適切なのかといった論点は一旦脇に置きます。ただ、大臣、厚労省告示523号の利用制限により、利用者がその行動をヘルパーや事業所、行政に逐一監視されるような状況ができてしまっているというのは事実だと思います。このことについて大臣はどうお考えですか。

〇国務大臣(福岡資麿君)

それぞれのサービスの利用につきましては市町村において個々のケースに応じて判断されるものでございますため、その利用状況について市町村が一定の確認を行うことはあり得るというふうに理解をしておりますが、引き続き、当事者等のご要望であったり自治体の考え方を伺いながら、必要に応じ、当事者の方だったり事業者の方々の負担軽減に努めてまいりたいと思います。

〇委員長(柘植芳文君)

天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

〇天畠大輔君

現場で起きている課題として認識し、受け止めていただけないでしょうか、大臣。

〇国務大臣(福岡資麿君)

課題としては、今ご指摘いただいたことを受け止めさせていただいています。そのうえで、その利用状況については、市町村において個々のケースにおいて判断されるものでありますため、その市町村が一定の確認を行うことはあり得るというふうに理解をしておりますが、当然、そこを受け止める方の心証等もあられると思います。当事者の方々のご要望であったり、また自治体のその運用の考え方、そういったものを伺いながら当事者や事業者の方々の負担軽減に努めてまいりたいと考えています。

〇委員長(柘植芳文君)

天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

〇天畠大輔君

こうした事例からヘルパーの派遣拒否にもつながっているのです。代読お願いします。

このはさみの事例でもわかるように、告示523号は介護事業所やヘルパーのケアの方向性にも大きな影響を与えます。告示があることで「このサービス提供は認められないかもしれない」と不安になり、支援を控えたり、執拗に当事者に確認してしまったり、本来なら可能な支援であっても事業所やヘルパーの判断で断るケースも少なくないと聞きます。告示523号の存在が現場を萎縮させているのです。

そして、結果として、障がい者の社会参加が妨げられ、健常者であれば自由にできる行動が「不適当」とされ、差別や孤立につながっています。さらに、政治活動や選挙活動といった外出さえも制限される場合があります。異議申立てのチャンスさえないのです。これは「制度的な虐待」と言っても過言ではありません。

大臣、通告なしですが、制度的な虐待だと思いませんか。

〇国務大臣(福岡資麿君)

度々この答弁で申し上げさせていただいていますが、重度訪問介護は、地域の日常生活の中で外出される際の介助を対象にしているところでございますが、公費による福祉サービスでもあるため、外出でありましても、合理的配慮など福祉サービス以外の局面での対応が求められるもの、また公費によって介助することが広く社会の理解を得られるかどうか疑問であるものについては対象外としているところでございます。それぞれの事例については、それぞれの事例についてそういった観点から判断されるものだというふうに承知をしております。

〇委員長(柘植芳文君)

天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

〇天畠大輔君

私の解釈では制度的な虐待です。代読お願いします。

次に行きます。今年4月22日の厚労委員会で、私は障害者手帳を持たない難病患者への就労支援について質問しました。その際、大臣より、難病患者の就労困難性を議論するにあたり、社会モデルの視点が重要という趣旨をご答弁いただき、ありがとうございます。しかし、根本的な問題は解決されていません。障がいによる就労困難性がありながら、障害者手帳制度の対象外のために国の支援から漏れている難病患者がいます。

一方、フランスやドイツでは、医学的な障害認定を基本としながら、そこからこぼれ落ちてしまうニーズを反映するために、就労困難性による追加の障害認定があります。厚労省もこの問題を把握し、独立行政法人のJEEDに諸外国の状況を調査するよう指示しました。それを受け、JEEDは、フランス・ドイツに訪問調査を行い、2020年3月に報告書を取りまとめましたが、いまだその知見を具体的に制度に落とし込めているとは言えません。

そこで、大臣にお伺いします。日本においても、このような諸外国の状況を把握しながら、手帳を所持していない難病患者について、就労困難性に着目した雇用率制度における対象障がい者の範囲拡大の議論を進めるべきではありませんか。大臣、いかがでしょうか。

〇国務大臣(福岡資麿君)

ドイツ及びフランスの法定雇用率につきましては、対象障がい者の範囲だけでなく、その水準の考え方等も我が国と異なりますことから、対象範囲の拡大を含む雇用率制度の全体的なあり方については多角的な検討が必要だと考えています。

障害者雇用率制度におけます障がい者の対象範囲につきましては、その検討にあたっては、雇用義務は、採用の自由との関係から、事業主に対する非常に強い規制であることを踏まえる必要がある一方で、令和4年の労働政策審議会障害者雇用分科会の意見書におきましては「手帳を所持していない難病患者等の取扱いを調査研究等の結果も参考に検討すること」とされていることから、昨年12月から開催しております今後の「障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」などにおいて、雇用率制度のあり方の中の一つの課題として関係者による議論を行っていきたいと考えております。

〇天畠大輔君

調査だけで満足せず、対象障がい者の範囲拡大の議論を進めてください。前回取り上げた「難病患者の就労困難性に関する調査研究」の報告書では「難病による障害は、従来の固定した後遺症としての障害ではなく、慢性疾患による生活上の困難性という、医療の進歩により生じた新たな障害認定の課題として取り組む必要がある」とまとめています。生活上の困難さに着目して難病患者への具体的な方策が必要なので、引き続き追求をしていきます。質疑を終わります。