2025年6月12日 厚生労働委員会質疑(国民年金法等改正案審議)「障害年金の認定はブラックボックス 透明性高めよ」
〇天畠大輔君
代読します。れいわ新選組の天畠大輔です。長年の障害年金無改革のツケが回ってきました。障害年金の認定は、時代に合わない不合理な点が多いにもかかわらず、長年放置されてきました。その結果、障害年金センター長の個人的な方針次第で不支給の割合が大幅に増えているのではないかというスキャンダルが報道で明らかになりました。命に関わる生活保障を受けられず困難にさらされる人たちを生み出す行政の不作為を到底許せません。真実を明らかにすべきです。
昨日、障害年金の不支給増加問題をめぐる調査報告書が厚労省から公表されました。2024年度の不支給割合は、サンプル調査で前年度比約1.5倍、精神障がいに限れば約1.9倍でした。本日は、日本年金機構の理事長に実態を伺いながらこの問題を整理していきます。
まず、資料1は、現在の障害年金認定の業務フローです。「基本の流れ」をご覧ください。障害年金センターの職員による事前審査の後に認定医による医学的な審査が行われています。
次に、資料2をご覧ください。この事前審査の体制は令和4年4月から導入されました。年金機構が障害年金業務や組織体制の見直しを行い、始まった取組です。しかし、調査報告書によれば、組織ぐるみでの、認定医の「傾向と対策」文書の存在や職員による等級案の提示といった極めて不適切な運用が明らかになっています。
そこで、まず日本年金機構に伺います。調査結果では、不支給の割合が増えているのは確かです。しかも、1,200件の不支給判定を見直した結果、約1割が「支給」に変更されました。専門性を持たない事務職員による事前審査の危険性を認め、認定の仕組みを再検討すべきではありませんか。
〇参考人(大竹和彦君)
お答えを申し上げます。精神障がいにつきましては、障害等級の目安と診断書等の内容を基に総合的に認定する仕組みとなってございます。
今般の調査においては、事前確認票は、職員が等級等を記載する欄があり、等級案も含め認定医が審査する際の参考情報という位置付けではあるが、認定医のヒアリングでは、事前確認票は助かっているが、等級案を見て決めているわけではないといった旨の話があったとされております。
今般の調査における認定医へのヒアリングを踏まえると、精神障がいについて、認定医が障害等級の目安と病状の経過、具体的な日常生活状況といった診断書等の内容を基に総合的に認定する仕組みの中では、職員が等級案を作成する必要性は高くないということでございますので、廃止することとされたというところでございます。以上でございます。
〇委員長(柘植芳文君)
天畠君が発言の準備をいたしておりますので、しばらくお待ちください。
〇天畠大輔君
そんなマイナーチェンジでいいのでしょうか。代読お願いします。
次に、通告なしですが、大臣に伺います。今回の調査結果では、不支給割合が上昇している理由を十分に分析していません。しかも「等級案の数字を見て等級を決めているわけではない」と、認定医のヒアリングのみで事前審査自体は問題ないことになっており、調査が不足していると考えます。事前審査が認定に与える影響をもっと掘り下げて再検証すべきではないでしょうか。
〇国務大臣(福岡資麿君)
今その事前、今回のヒアリングの結果につきましては、この認定プロセス自体はその認定基準からは逸脱をしておりませんが、その新規裁定のうち不支給割合は13.0%と令和5年度の8.4%より上昇しておりまして、特にその精神障がいの上昇が大きいということでございます。
この不支給割合の上昇は、障害等級の目安より下位等級に認定され不支給となっているケース等が寄与している可能性が示唆をされたところでございます。また、審査書類に判断の理由が書かれていないなど、丁寧さに欠けるものが見受けられたということでございます。
こうした結果を踏まえまして、今後のこの運用改善、運用改善につきましては、先ほどもお話ありましたように、この精神障がいについて、職員が等級案を付すことの廃止であったり、審査書類に判断の理由などを丁寧に記載することの徹底であったり、不支給事案について複数の認定医による審査をしっかり行うというようなことを行うこととするものでございます。
〇委員長(柘植芳文君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。
〇天畠大輔君
再検証をすべきです。また、データで不明点もあります。委員長、この2点について理事会協議をお願いいたします。
〇委員長(柘植芳文君)
ただいまの事項につきましては、後刻理事会で協議をさせていただきます。
〇天畠大輔君
代読します。続いて、資料3をご覧ください。
年金機構は、事務目標として、いわゆるサービススタンダードを定めています。サービススタンダードとは、年金請求書を受け付けてから年金が決定され年金証書が請求者に届くまでの標準的な所要日数のことです。障害年金では、3か月、その達成率90%以上を目指しています。機構が発足したときの平成22年1月より実施しています。
報道により、認定医が申請1件に1分ほどしかかけられないという現場のご苦労が分かりました。また、サービススタンダードの達成状況は職員の人事評価にも影響するといいます。そんな中で果たして正しく認定ができるのでしょうか。迅速性を求めたことで本当に必要な人が障害年金を受給できないのであれば、このサービススタンダードの考え方や運用は見直すべきだと考えます。
年金機構に伺います。サービススタンダードが障害認定の審査へ与える影響についてどうお考えですか。
〇参考人(大竹和彦君)
お答えを申し上げます。当機構におきましては、正しい年金をできるだけ早くお届けするという観点から、年金請求書を受け付けてから年金が決定され年金証書がお客様に届くまで、これの標準的な所要日数をサービススタンダードとして設定をし、取り組んできているところでございます。
老齢年金や遺族年金のサービススタンダードについては1か月としている一方、障害年金につきましては、年金請求書のほか、診断書や病歴・就業状況等申立書等の提出書類、これが適切にそろっているかどうかの確認であるとか、提出された診断書等の記載内容の事前確認票への整理であるとか、障害認定医による障害等級の認定など、慎重かつ適切な決定を行うために一定のプロセスが必要となることを考慮して、老齢年金であるとか遺族年金と比較して長い3か月と設定しているところでございます。
今回の調査結果では、ヒアリングによれば、精神障がいグループは特に業務量が多いと感じるなどといった話もあり、こうした環境が審査書類に丁寧さに欠けるものが見受けられたことに影響している可能性も考えられるとされたところでございます。
この結果を踏まえまして、審査書類に丁寧に記載することの徹底等の対応策、これを実施することとしておりまして、こうした対応策、これを踏まえた審査が滞りなく行われるよう、速やかに必要な体制の整備を進めてまいりたいと考えております。以上です。
〇委員長(柘植芳文君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。
〇天畠大輔君
答えになっていません。調査報告書でサービススタンダードの影響を検証していないのは大問題です。代読お願いします。
次に、質問一つ飛ばします。次に、現在の認定制度の枠組みの中で、少なくとも変えるべきことについて伺います。
まず、認定医についてです。障害認定基準や認定事例について認定医が情報共有する会議はあるものの、適切な認定を行うための実務研修はないと伺っています。認定医の採用時にはどのようにして認定基準や認定方法を指導し、それらへの習熟度を測っているのでしょうか。年金機構の理事長よりお答えください。
〇参考人(大竹和彦君)
お答えを申し上げます。新たに障害認定医にご就任をいただいた際には、障害年金センターの職員から障害認定基準あるいは認定事務の流れ等につきまして丁寧にご説明を申し上げているところでございます。
また、認定事例の共有や審査基準に対する意識の統一を図るため、毎年、障害認定医会議を開催をし、認定事例や障害認定基準の考え方等について情報共有を行っているところでございます。
さらに、今般の調査結果を踏まえまして、判断のポイントを付した具体的な認定事例を作成をし、認定医に周知を実施することとしております。こうした取組を通じて認定医の習熟を図り、より適切な認定が行われるように努めてまいりたいと考えております。以上です。
〇天畠大輔君
代読します。それは進めてください。引き続き、年金機構に伺います。
認定医の専門分野に応じて年金機構がどのように審査を割り振っているのか、外からは分からないことも不信感の原因の一つです。担当した認定医の専門分野などの情報を申請者が確認できるようにするのはいかがでしょうか。
〇参考人(大竹和彦君)
お答えをいたします。障害年金の認定においては、障害の種別に応じて必要な知識、経験のある認定医に障害認定の審査を依頼しているところでございます。認定医に関する情報につきましては、審査の公平性の観点から、公平性を確保する観点から開示を差し控えさせているところでございまして、ご理解を賜りたいと願います。以上です。
〇委員長(柘植芳文君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。
〇天畠大輔君
ならば、認定医の専門分野を公表してもよいのではないですか。代読お願いします。
認定医の専門分野公表だけでも、申請者の納得や不適切審査の抑制にもつながります。是非お願いします。
さて、もう一度、資料1をご覧ください。認定医が認定に迷った際には複数人で考える仕組みも用意されています。もし職員の意見と認定医の判断が一致しない場合は、もう1人の認定医が審査するセカンドオピニオン、さらに、その2人の認定医の判断が異なった場合には認定審査委員会に回る仕組みです。
ただ、令和5年度の実績では、審査すべき申請数が約38万件だったのに対して、セカンドオピニオンは3,711件、認定審査委員会は僅か19件にすぎず、非常に限定的でした。ほとんどの案件で複数の専門家の視点は入っていないということです。
また、現在の認定審査委員会はメンバーすべてが年金機構関係者で構成されています。障害年金センター長、機構内部で高度専門職と呼ばれている医師、年金機構が委嘱する障害認定医です。
調査報告書では「すべての不支給事案について、複数の認定医が審査を行うこととする」とされています。しかし、セカンドオピニオンにしても認定審査委員会にしても、医学的視点に偏り過ぎなんです。
大臣、障害年金認定の透明性・公平性を高めるためにすぐできることとして、認定審査委員会を改善し、更に活用すべきではないですか。私は、今回の報道を受けて調査が開始される前から、認定審査委員会に社会モデルの視点を取り入れるために外部の福祉職の専門家を入れるべきだと厚労省に提言してきました。本調査を受けて、大臣の考えをお聞かせください。
〇国務大臣(福岡資麿君)
障害年金の認定に当たりましては、認定医の医学的な総合判断を特に要するものについては複数の認定医による審査を行っており、また、複数の認定医が審査した事案についてその意見が分かれた場合は障害認定審査委員会に付議することとなっております。
今般のこの調査報告書においては、この委員会について、複数の委員の意見を確認することができる有意義な仕組みであり、委員会の客観性であったり透明性を高め、本仕組みを更に活用していく観点から、福祉職などの外部の者の委員会への参画などの取組を進めることとされております。日本年金機構においてこうした取組が速やかに行われるように指導をしてまいります。
〇委員長(柘植芳文君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。
〇天畠大輔君
社会モデルの視点を取り入れるということですね、大臣。一歩前進ですが、できることはまだあります。代読お願いします。
ここまでのやり取りの中で、やはり現在の障害年金制度は、客観性や透明性に欠けるという構造上の問題があると思います。たとえ障害認定基準があっても、具体的な認定のプロセスは日本年金機構の内規で定められており、その実態を厚労省が把握していないのも問題だと改めて指摘いたします。
さて、2006年、社会モデルの考え方をベースとした障害者権利条約が国連で採択され、2014年に日本も批准しました。しかし、いまだにこの視点は障害年金制度に落とし込まれていません。
資料4をご覧ください。障害年金の認定を医師が行うと規定したのは、50年以上前のこの社会保険庁通知です。ただ、ここでは認定医が「医学的事項の審査」をするとしか書かれていません。生活・就労上の困難など社会モデルの視点が入っていないこの通知が今まで改正されていないことは象徴的です。
現状の認定の仕組みは、医学的視点に偏り過ぎています。診断書作成医の診断書により認定医が障害程度を認定し、ごく僅か、認定審査委員会に回っても、まだ機構内部の医師が話し合います。
さらに、認定医1人が認定を行う仕組みそのものに問題があります。社会福祉関係者の所見が書面だけでは、認定の視点が医療モデルに偏っている点は変わりません。障がい者の生活支援や障がい者の権利擁護に詳しい専門家が認定の判断そのものに加わる仕組みがなければ総合的な判断は難しいはずです。ご存じのとおり、この点は、私だけではなく、精神、発達、知的障がいの当事者団体、障害年金の専門家団体が訴えているものです。早急に改善策を講じるべきです。
「認定医1人による審査ではなく、医師と社会福祉職の合議体での審査」「書類による形式審査からヒアリングなどを含む実質審査」にしてください。厚労大臣、いかがですか。
〇国務大臣(福岡資麿君)
障害年金の認定に当たりましては、請求者の状況をよく知る主治医が記載していただいた診断書や請求者本人や家族が記載する病歴、就労状況等の申立書などにより、障害の状態や日常生活の状況等を確認の上、審査をしております。この申立書は社会福祉職の方が記入いただくこともございまして、総合的な判断を行うこととしております。
その上で、今回の調査結果では、障害認定審査委員会について、客観性や透明性を高める観点から、福祉職などの外部の方の参画を進めることとしておりまして、まずはこの対応にしっかりと取り組みたいと思います。
また、障害年金の審査は、以前は都道府県ごとの事務センターも活用しておりましたが、認定業務の標準化等の観点から、現在は東京の障害年金センターで集約して審査を行っておりまして、全国からの請求に対し書面審査を基本としているところでございます。
こうした中で、実地調査を行うということにつきましては、市町村で認定している障害福祉サービスとは事情が異なり、審査件数が年間40万件近くある中で、審査に相当の時間を要することとなり、運用上の課題があると考えております。
〇委員長(柘植芳文君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。
〇天畠大輔君
自治体の障害福祉課と連携して、希望する方にヒアリングをするぐらいはできるのではないでしょうか。大臣、いかがですか。
〇国務大臣(福岡資麿君)
まず、以前はその都道府県ごとの事務センターを活用してやっておったわけですが、そうするとかなりばらつきがあったために、この標準化の観点から現在はその東京の障害年金センターで集約して審査を行っているところです。
その上で、まずはその請求者本人であったりご家族が記載する病歴、就労状況等の申立書、こういったことをしっかり記入していただいて、そこをしっかり見させていただくということ、また、この障害認定審査委員会等につきましては、客観性であったり透明性を高める観点から福祉職等の外部の方に参画を進めることとしておりまして、まずはこうした対応にしっかりと取り組んでまいりたいと考えています。
〇委員長(柘植芳文君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。
〇天畠大輔君
申請者に会ったことのない認定医がふだんの生活まで審査するのは無理がありますよね、大臣。代読お願いします。
もちろん、社会モデルの視点を入れればすべてが解決するわけではありません。しかし、当事者の生活・就労上の困難さを認定する側も分かるようになれば、外部への説明しやすさも増します。より公正で透明性の高い支給ができるのではないでしょうか。
就労できると、障がいが軽い、生活上の困難さが低いという見方が蔓延している可能性も指摘します。厚労省も日本年金機構も、就労の可否のみをもって不支給にすることはないと言い張りますが、現場で申請のサポートをする社労士や、不支給となり認定調書の開示請求をした当事者からは、就労が不支給の要因になったとの声が上がっています。これも社会モデルの視点に立てば、職場の環境整備や合理的配慮、家族のサポートによって就労が可能になっているだけであって、障がいが軽くなったり生活上の困難さがなくなっているわけではないのです。
そもそも、これまで、社会モデルの視点も含め、障害年金の認定の仕組みに関する議論が十分なされてこなかったことが問題です。かねてより私は、年金部会の中に障害年金の専門家がいないことを指摘してきました。今こそ障害年金を議論する会議体をつくり、そこに当事者団体、障害者権利条約に詳しい弁護士や当事者の生活実態に詳しい社会福祉士などの障害年金の専門家も参画し、障害認定基準や認定審査方法などを具体的に議論すべきと考えます。大臣、簡潔にご答弁願います。
〇国務大臣(福岡資麿君)
今般の令和6年度の認定状況の調査結果におきましては、認定プロセスは認定基準等から逸脱していないが、新規裁定のうち不支給割合が特に精神障がいで大きく上昇しており、これには「障害等級の目安より下位等級に認定され不支給となっているケース」などが寄与している可能性が示唆されたところです。
また、審査書類に判断の理由が書かれていないなど、丁寧さに欠けるものが見受けられました。こうした結果を踏まえまして、認定プロセスにおいて、審査書類であったり申請者に対する決定通知書を丁寧な記載とすることを徹底すること、職員が精神障がいの等級案を付すことを廃止すること、今後のすべての不支給事案について複数の認定医による審査するといった取組を行うこととしておりまして、まずはこの対応を進めたいと考えております。
その上で、この障害年金につきましては、昨年、社会保障審議会年金部会において引き続き整理が必要とされた事項などについて、まずは論点の整理であったり議論の進め方について検討を進めるとともに、この認定の在り方についても様々なご意見を聞きながら検討を進めてまいりたいと思います。
〇委員長(柘植芳文君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。
〇天畠大輔君
当事者参画について否定はしなかったと理解しました。不公正な不支給は生じさせないこと、障害年金の論点整理を速やかに着手すること、以上2点、大臣、約束してください。
〇国務大臣(福岡資麿君)
今後、社会保障審議会年金事業管理部会であったり日本年金機構運営評議会といった外部有識者の方々に対しまして、この報告書について報告をいたしますとともに、過去の事案の点検状況であったり今後の改善の実施状況について報告し、その意見を踏まえて対応を考えてまいりたいと思います。
〇天畠大輔君
まとめます。当事者は声を聞かれるだけの存在として扱うのではなく、議論の主体となることが大事です。質問を終わります。
〈配布資料〉



