2025年5月29日 厚生労働委員会質疑(労働施策総合推進法等改正案審議)参考人質疑
〇天畠大輔君
代読いたします。れいわ新選組の天畠大輔です。参考人の皆様、本日は貴重なお話をありがとうございます。まず、内藤参考人、高木参考人のおふたりに伺います。
本改正案の4条4項についてです。「当該言動が行われることのない就業環境の形成に関する規範意識の醸成」について、政府はおとといの質疑で「職場におけるハラスメントを行ってはならないということが中心である」としつつも「このほかに他者の人格や尊厳を尊重することや差別的意識を持たないことなど、ハラスメントのない就業環境の形成に資する人々の意識や認識を含み得るもの」とわざわざ曖昧な「心得」の概念を付け加えています。
これによって「ハラスメントを行ってはならない」という法目的の中心部分がぼやける改正になっていると思いますが、内藤参考人、高木参考人の順にご意見をお聞かせください。よろしくお願いいたします。
〇参考人(内藤忍君)
ご質問ありがとうございます。端的に言いますと、非常にこの条文はわかりにくいと思います。ぼやけるものになっていると、答弁は、思います。
〇参考人(高木りつ君)
おっしゃるとおりで、シンプルに「何人も職場においてあらゆるハラスメント、差別を行ってはならない」と一言入れていただきたいと思っております。
〇委員長(柘植芳文君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、しばらくお待ちください。
〇天畠大輔君
内藤参考人と高木参考人にお伺いします。政府はなぜハラスメントを禁止できないとお考えになりますか。
〇参考人(内藤忍君)
ご質問ありがとうございます。これは想像ですけど、まず一つは、法規定をどこに、何の法律に置くかということが技術的に問題になっているかなというふうに思います。
現在の労働施策総合推進法や均等法は、名宛て人が事業主である行政指導の根拠規定、根拠法なんですね。ですから、人に対してハラスメントを行ってはならないというような規定がなじみにくい、そういった法律ですので、どういった法律を作って、あるいはこの法律の中に落とし込めるのかどうか、そういったところの大きな検討が必要なんだと考えているというふうに思っています。
〇参考人(高木りつ君)
世界水準で人権が尊重される、例えばILO190号条約批准もそうですが、世界水準で人権が尊重されて、そもそも職場で差別もハラスメントも暴力もないということを目指すという認識がやや遅れているからでしょうか。以上です。
〇天畠大輔君
代読いたします。ありがとうございます。次に、中井参考人、内藤参考人のおふたりに伺います。
昨年7月、大手自動車メーカーの系列会社が金型の費用を下請に対して不当に押し付けていたとして、公正取引委員会から下請法違反の指摘があり、是正勧告を受けたというニュースが流れました。このような事例においては、発注側の労働者が「会社が利益を出してこそ自分たちの生活がある」と考えるのか、それとも「下請業者の企業や労働者がハラスメントに苦しむような社会で、加害の側で生きていくのか」ということが問われるのではないでしょうか。
私は、すべてのステークホルダーが真摯な対応を重ねることでしかこの問題の解決の糸口は見えてこないと思います。私たちは、多くの場合、なんらかの意味で買手でもあり売手でもある、そんな社会の中で暮らしているからです。例えば、私のような障がい当事者が差別に抗議したり合理的配慮を求めたりするとき、障がいへの理解がない受け手が「カスハラではないか」と受け止める場面が想定されます。しかし、そんな瞬間こそ「対話」が一番重要だと私は考えます。
カスハラ対策を強化するうえでは対話の重要性を喚起することが極めて重要と考えますが、中井参考人、内藤参考人の順にお考えをお聞かせください。
〇参考人(中井智子君)
ご質問いただきましてありがとうございます。パワーハラスメントにも共通しているかと思われますが、今ご質問の前提で例示を挙げていただいたような取引先との問題、あるいは障がい者の方が何かを求める場合の問題、すべてコミュニケーションがその間に介在をしているということがあります。このコミュニケーションのあり方、あるいはどちらか一方のコミュニケーションがあまり上手ではないという場合に紛争が起きてくるということ、これは私も実務上大変よく実感をしております。その点では、ご指摘のとおり、対話が重要というのは私もそのとおりだというふうに認識をします。
問題意識、カスタマーハラスメントの問題に最後お話を持っていくとすれば、相手方も、自分側も相手方も同じ問題意識を持っていただくということによって、対話が同じ方向を向いていただくということに少しでもなればいいという考えは私は持っております。以上でございます。
〇参考人(内藤忍君)
ご質問ありがとうございます。カスハラに限らずですけれども、対話が重要というお話ありましたが、もちろんそれを否定するものではないのですが、この社会はマジョリティーがつくっています。そして、マジョリティーのこの尺度で判断しているところがありまして、いろいろ決めているところがありまして、そこで対話といったときに、少数派が、なんというんですかね、合わせるような形というのは私は違うのではないかなと思います。
そういった意味で、まだ日本はマイノリティーをマイノリティーにしているのがマジョリティーであるという認識が欠けていると思っていまして、その前提がないところでの対話というのはちょっと危険かなというふうにも感じております。
〇委員長(柘植芳文君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。
〇天畠大輔君
対話は指針作りから重要です。障がい当事者の参画は不可欠と考えますが、いかがですか。中井参考人と内藤参考人と高木参考人にお伺いします。
〇参考人(中井智子君)
カスタマーハラスメントに関してということを前提にお答えをいたしますけれども、もちろんいろいろな要因がある中で、障がい者の方への対応というのは当然ですけれども一定の配慮が必要であるというふうに考えます。そこは、そうではない、健常者という言い方をして申し訳ありません、そういう方とそうじゃないという方に対する対応方針がまったく同じでいいということではないというふうに思います。
その点では、ご指摘のように指針等で、様々な方からのいろんな接触というのがあるのだと、そしてそれはどういう考え方でやってほしいということを指針の中に取り入れていただくということ自体は私は賛成でございます。そういった視点も当然必要だと考えます。以上です。
〇参考人(内藤忍君)
ご質問ありがとうございます。関連して、東京都のカスハラ条例のときは消費者団体がそういった障がい者の方の立場代弁することを言っていたと思います。ですから、こちらのカスハラの今回の措置義務のところでも障がい者の方の意見が反映されることが望ましいと考えます。
〇参考人(高木りつ君)
国連人権理事会も報告しているとおり、障がい者の方々もリスクにさらされているグループの中にいます。対話づくりのときに、是非、障がいのある方々、合理的配慮はもちろん当然ですが、対話の中に参画していただいて、多少不快な思いをされるかもしれませんが、一緒につくり上げていっていただきたいと考えております。
〇天畠大輔君
代読いたします。ありがとうございます。次に、大江参考人に伺います。
先生は、PTSDをはじめトラウマティック・ストレスに関する研究を専門とされています。例えば、なんらかのハラスメント経験によるトラウマをすでに抱えている方が職場で新たなハラスメントを受ければ、その影響は極めて大きいと思います。
2割ないし3割の方がハラスメントを経験している現状を考えれば、トラウマインフォームドケアの観点から、誰もがハラスメント経験によるトラウマを抱えているかもしれないという意識が必要と考えますが、大江参考人のご意見をお聞かせください。
〇参考人(大江美佐里君)
ありがとうございます。本日、私の陳述においてはトラウマインフォームドケアのお話はしておりませんでしたけれども、もう非常に有益なご指摘をいただきましてありがとうございます。
トラウマインフォームドケアの観点、これを、すみません、話そうとするとまたお時間が非常にたってしまいますが、非常に重要な観点でして、こういったことも企業や皆様、もう皆様、本当に企業だとか職場とかそういったことを超えて、トラウマインフォームドケアというのは非常に重要な概念であるというところだけを本日はお答えさせていただきます。
〇天畠大輔君
代読いたします参考人の皆様、ありがとうございました。終わります。