2025年5月13日 厚生労働委員会質疑(薬機法等改正案審議)「薬事承認のゴールドスタンダードを崩す改正に待った!パート2」
〇天畠大輔
れいわ新選組の天畠大輔です。まず、入院時の付添いについて伺います。代読お願いします。
先月、医療情報ネットのナビイにおける「入院時の介助者の付添いの可否」について伺いました。そこで、障がい者が入院する際の介助者の付添いの体制整備についても医療機関が特記事項で記載できるようにしているとのことでした。
障がい者の入院時に必要な支援内容等については、平成28年厚労省発出の「特別なコミュニケーション支援が必要な障害児者の入院時における支援者の付添いの受入れについて」という事務連絡を医療機関に周知しています。しかし、周知が不十分で、介助者の付添いを断られるのは日常茶飯事です。私たちにとっては命の危険です。特に重度障がい者の介助はとても個別性が高く、介助者の付添いなしの入院で骨折した事例もあります。
医療機関へ報告を求めるのは今年度にシステム改修をした後と伺っています。その際に報告項目について簡単な説明を付ける、とも伺っております。であれば、その説明の中にこの事務連絡も添付をして、受入れ体制の整備がさらに進むよう周知する機会にしてください。大臣、いかがでしょうか。
〇国務大臣(福岡資麿君)
特別なコミュニケーション支援が必要な方々が入院中に必要な支援を受けられるということは大変重要でございまして、これまで事務連絡であったり関係課長会議の場において、特別なコミュニケーション支援が必要な障害児者の入院時における支援者の付添いの受入れにつきまして、自治体や医療機関等に重ねて周知を行っているところであります。
そのうえで、今後、医療情報ネット「ナビイ」における医療機関の報告事項として、新たに「家族・介助者の付添い・同行の可否」を追加することとしておりまして、ご提案ありましたような医療機関向けの説明資料へ記載することも含め、今般の項目追加の周知に合わせてどのように周知を進めることができるか検討してまいりたいと思います。
〇委員長(柘植芳文君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。
〇天畠大輔
是非、前向きに検討してください。代読お願いします。
最新の事務連絡には、医療機関へのヒアリングを通して、実際に介助者の付添いを受け入れた際の対応例がまとめられています。慣れた介助者の存在は、我々重度障がい者にとって命綱ですから、受入れ体制がさらに進むよう周知をお願いいたします。
それでは、前回に引き続き、条件付承認制度について質問します。厚労省は、国内の第Ⅱ相試験の結果がなくとも海外の第Ⅲ相試験の結果を踏まえて条件付承認する可能性があると答えました。
その際、臨床的に意義のある民族差がないと考えられる医薬品であれば可能性があるとのことでしたが、その基準について明確な規定はあるのでしょうか。厚労省よりお答えください。
〇政府参考人(城克文君)
お答え申し上げます。今回の見直し後の条件付承認制度は、対象範囲の拡大を意図したものでございまして、その有効性・安全性の確認のレベルは、これまでの条件付承認制度と変わりないものでございます。
委員ご指摘いただきました民族差でございますが、これは提供される医療や食事など個人を取り巻く環境や文化に関連した外因性の要因と、遺伝多型や年齢など内因性の要因の2つに分類されるものと考えられております。
このような民族差に対する考え方は、国際的にコンセンサスが得られているガイドラインにおいて整理をされておりまして、日本の承認審査におきましても、海外データを活用する際にはこれらの影響の有無を確認することとしているところでございます。
〇委員長(柘植芳文君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。
〇天畠大輔
法令上の例外規定がないから怖いんです。そこを政府に理解していただきたい。代読お願いします。
薬害オンブズパースン会議は「検証的臨床試験を不要とすること自体が薬機法上の原則の重大な例外であるにもかかわらず、さらに第Ⅱ相臨床試験まで不要としうることは、例外の範囲を不当に拡大する余地を残すものであり、到底許容できない」と主張されています。私も例外の範囲が歯止めなく広がる懸念を抱いています。
令和6年4月に公表された「創薬力の強化・安定供給の確保等のための薬事規制のあり方に関する検討会」報告書に、検証的試験における日本人データの必要性について、その対応の方向性が整理されています。
「我が国での医薬品の承認審査においては、日本が参加した国際共同治験又は国内試験の結果に基づいて、日本の医療環境下の日本人での有効性及び安全性を評価することが基本であるとする考え方に変更はない。また、国際共同治験については、日本人の組入れ例数が極めて少数であっても、臨床的観点も踏まえた総合的かつ多角的評価により、全体集団の成績とのある程度の比較検討は可能であり、また、医療現場への情報提供等の観点からも、日本が参加する意義はあると考えられる。少数例の国内試験についても同様に一定程度の意義はあると考えられる」
このように示されています。
そのうえで、本報告書では「日本人患者の医薬品へのアクセスが遅れる不利益を最小化する観点から、日本人患者における臨床試験成績がなくとも薬事承認を行うことが適切であると考えられる場合を整理」していますが、その要件については、法令上の定めが何もありません。
患者の利益のためにそのような場合があり得るとしても、それはあくまでも例外であって、慎重な検討を経て法令上にきちんと規定すべき事項です。法令上の基準が不明確なまま、個別の審査の中で日本人データの要否が決まってしまう運用には賛同できません。
前回に引き続き、繰り返しになりますが、私は条件付承認制度が患者の利益になり得ることに否定的な立場ではありません。一方で、承認前・承認後共に、臨床試験の試験成績を不要にできる法律の立て付けは受け入れ難いという立場です。
大臣、せめて承認後の検証的臨床試験は必須にすべきと考えますが、見解をお聞かせください。
〇国務大臣(福岡資麿君)
今回の条件付承認に係る見直しは、医療上特に必要性が高い医薬品への速やかな患者アクセスの確保のため、承認審査の際に有効性・安全性を確認するためのデータの種類であったり取得方法などについて規定の整備を行うものでございますが、重ねて申し上げますとおり、データを踏まえて承認する際の有効性・安全性の確認のレベルはこれまでの条件付承認と変わらないものでありまして、科学的な根拠がないものを安易に承認することはございません。
こうした考えのもとで、条件付承認時に十分に有効性・安全性を確認することを前提に、検証的臨床試験を求めるかどうか含めて、どのようなデータの提出を求めるかについて、個別の承認審査の中で薬事審議会の意見を聞きながら判断することとなります。
国民の皆様には有効性及び安全性が確保された医薬品を迅速に届けられるように、制度の運用に適切に取り組んでまいりたいと思います。
〇委員長(柘植芳文君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。
〇天畠大輔
大臣、抗がん剤イレッサの事例を覚えていますか。
〇政府参考人(城克文君)
お答え申し上げます。イレッサの関係の事案のお話だと思います。その結果を踏まえて、効能・効果を、イレッサについては効能・効果をEGFR遺伝子変異陽性に限定するという一部変更承認を実施する、そういったものがあったということでございます。
〇委員長(柘植芳文君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。
〇天畠大輔
もう一度、大臣に伺います。イレッサの事例を覚えていますか。覚えているか覚えていないかで大丈夫です。
〇国務大臣(福岡資麿君)
すみません、過去、報道等において目にした記憶はございましたが、その内容等につきましては失念しておりましたため、今確認をさせていただいておりました。
〇天畠大輔
代読いたします。日本では、忘れてはいけない薬害の歴史があります。私が言及した抗がん剤イレッサもそのひとつです。日本で多くの間質性肺炎の死亡者を出しました。2002年に世界に先駆けて異例の早さで承認したのち、たった3か月の間に162名、再審査によってイレッサの適用が限定される2011年までに843名が間質性肺炎で亡くなりました。
日本に遅れて承認したアメリカやEUでは、承認の取消しや再審査による適用の限定などの対応がより迅速に行われました。日本のこれらの過ちに対する反省、批判的な総括なしに、さらなる規制緩和は許されないと考えています。
やはり要件を省令に落として、個別の審査で検証的臨床試験の必要性が決められる立て付けは危険です。検証的臨床試験の必須化を条文に明記すべきではないでしょうか。大臣、もう一度お願いいたします。
〇国務大臣(福岡資麿君)
今ご指摘ありましたように、その薬害があってはならないという問題については認識を一にしております。そのうえで、今回のこの条件付承認制度は、国民に最新の医薬品を迅速に届けるという観点から、検証的臨床試験が実施困難な医薬品について条件付で承認する制度でございまして、現行におきましても、精密かつ客観的な考察がなされた臨床試験であれば、ランダム化比較試験でなくても承認できる可能性はあるものでございます。
今回の改正にあたりましても、有効性・安全性の確認のレベルを変えるものではなく、条件付承認後に検証的臨床試験を求めるかどうかを含めてどのような提出を求めるかについて、個別の承認審査の中で薬事審議会の意見を聞きながら判断していく、このことが適切だと考えております。
〇天畠大輔
代読いたします。次に行きます。取消し規定の実効性にも疑問が残ります。承認の段階で検証的臨床試験の期限等の条件を明確化すべきです。
厚労省に伺います。個別に条件として期限を設定したとして、検証に時間がかかる場合は期限の延長もあり得るのでしょうか。お願いいたします。
〇政府参考人(城克文君)
お答え申し上げます。医薬品の有効性・安全性の確保のために、条件付承認におきまして、条件として付された試験等が速やかに実施されることは重要ではございますが、個別品目ごとに臨床試験等に要する期間が異なり、実施期間を一律に設定することは適切ではないと考えております。
個別品目の試験の実施期間につきましては、条件として個別に期限を設定する方法や、市販後の医薬品リスク管理計画において条件が付された試験を管理する方法などは考えられるところでございます。個別品目の具体的な期限はできるだけ短い期間を設定することが望ましいという観点と、その期間内での試験の実施可能性の観点の双方のバランスを図る必要がございまして、品目の特性や医療環境を踏まえて、薬事審議会の意見も聞きながら検討したいと考えております。
この条件付承認後の状況の変化に応じまして条件付承認時に設定した期限を延長せざるを得ない場合は、これはあり得るものとは考えますが、医薬品の有効性・安全性確保のために条件として付された試験が速やかに実施されるよう適切に対応してまいりたいと考えております。
〇天畠大輔
代読します。実際に日本で条件付承認された5品目のうち、日本新薬ビルテプソと、楽天メディカルADCアキャルックスの2品目は、承認から5年以上がたったにもかかわらず、いまだに検証的臨床試験による有効性を確認できておりません。取消し規定を設けても検証の長期化に歯止めをかける条文がありません。
安全性・有効性を担保しながら、薬を必要な人にできる限り早く届ける必要性はあると考えますが、だからこそ、薬機法14条3項は維持したうえで、承認後の条件は検証的臨床試験を必須にすると条文上明記すべきです。再考を強く求めて、次に行きます。
本改正案では、後発医薬品メーカーの一連の不正事案を受けて製造販売業者に対する安全性確保のための体制強化として、医薬品の品質保証・安全管理における責任者設置の法定化、副作用に係る情報収集等に関する計画作成の義務付け、法令違反があった場合に責任役員の変更命令を可能とすること、また「GMP=製造管理及び品質管理の基準」の適合性調査の監督強化等が盛り込まれております。
医薬品の供給不足はメーカーによる不正事案が大きな要因のひとつです。本改正内容の方向性に異論はありませんが、医薬品の安定供給に向けてはメーカーへの査察体制のより抜本的な強化も必要と考えます。
世界の製薬企業の売上げランキングの上位を占めるアメリカ・スイスの査察体制はどうでしょうか。平成28年3月に公表された厚労科研「国際的整合性を踏まえた医薬品の品質管理に関する査察手法の質的向上に資する研究」の報告書では、スイス、英国、カナダ、米国、欧州評議会の手法を比較検討し、日本における査察体制について考察がなされています。各国の実態を調査すると「不正は通常のGMP調査で発見されることは少ない」一方で「内部通報が不正発見の大きなきっかけとなっている」という結果でした。
両国の査察体制について、日本における体制との違いを含め、把握していることを厚労省より教えてください。
〇政府参考人(城克文君)
お答え申し上げます。平成27年度の厚生労働科学特別研究の報告書によりますれば、米国及びスイスの査察当局には医薬品メーカー内部の職員等からの通報を受け付ける仕組みがあると報告をされております。我が国においても同様に、公益通報者保護法に基づき、厚生労働省や都道府県において公益通報制度が整備をされております。
また、同報告書によれば、不正事案に係る対応につきまして、米国及びスイスの査察当局では、不正捜査専門の職員が犯罪捜査を行っていることが報告をされております。日本においては、刑事司法の仕組みが異なりまして、医薬品メーカーへの査察を行う都道府県やPMDAに犯罪捜査を行う権限はなく、必要であると認める場合に、刑事訴訟法に基づき警察当局に告発を行う仕組みとなってございます。
〇天畠大輔
代読します。日本には、答弁のとおり、公益通報制度がありますが、それによって医薬品メーカーの不正が発覚した事例はありますか。厚労省よりお答えください。
〇政府参考人(城克文君)
医薬品の製造管理・品質管理に係る不正が発覚する経緯は様々でございますが、その中には、医薬品製造業者の職員等からの公益通報を端緒としたものも含まれてございます。
なお、通報者に対する不利益な取扱いを防ぐため、原則として発覚の端緒が公益通報であるか否かは明らかにしないこととしておりますので、その詳細についてはお答えを差し控えさせていただきたいと思います。
〇天畠大輔
代読します。公益通報制度が医薬品メーカーの不正発見に役立っているのか、個人情報には留意しつつ分析・評価が必要ではないでしょうか。そのうえで、より効果的な内部通報の仕組みを検討すべきです。
先ほどご紹介した厚労科研の報告書での提案をもう少し詳しく見てみます。調査対象国では、内部通報が不正発見の大きなきっかけとなっており、英国、カナダ、米国では不正事例の発見のため、内部通報の専用ホットラインが設置されています。その実態を受けて本報告書では、日本における公益通報制度が整備されていることを前提に、厚生労働省及びPMDAに医薬品製造における不正専用の内部通報ホットラインを設置するとともに、内部通報制度について広く国民に周知することが提起されています。
また、調査対象国では、不正事例の捜査は、GMP査察官とは別の不正専門の捜査官が担当しているとのことです。特に、スイス、英国、米国では、同じ部局に司法警察権を有する捜査官が対応しているため、被疑者の逮捕、令状の執行などの権限を持って臨む捜査は、効率的かつ強力に事実究明が進められるとともに大きな抑止効果になると考えられるとの分析がなされています。
そのうえで、本報告書は、日本においても重大な不正行為に対応するために、麻薬取締官のような警察権限を有する職員のGMP査察での参画というのが提起されています。
そもそも薬機法の本来の目的は、医薬品の安定供給の前に、安全性の確保にあります。医薬品の元厚労省官僚で、現在は長崎県立大学教員の堤修三氏によれば「本来、医薬品の安定供給は薬機法の関与するところではない」と述べています。つまり、製造業としての許可を得ている意味では一定量の薬の供給が求められますが、常に安定供給できるとは限らず、法的な安定供給義務までは課せられていないと考えるべき、としています。
さらに、医薬品の供給不足は、国を挙げてジェネリック医薬品の使用促進施策を進める中で、一部メーカーで不正事案が生じていることが大きな原因だと指摘しています。その観点から、医薬品の安定供給には行政府による査察体制の強化が必要と唱えています。
すべてを海外の仕組みと同じようにするかは議論が必要ですが、医薬品の製造の安全性確保は命に関わる重大な課題です。より効果的な内部通報の仕組みの構築など、海外の仕組みも参考にしながら、査察体制のより抜本的な強化を検討すべきと考えますが、大臣の見解をお答えください。
〇国務大臣(福岡資麿君)
我が国は、医薬品の製造所の査察方法等につきまして、国際的な標準化を進める枠組みに参加をしておりまして、査察の基準であったり、方式の国際整合を図るための取組を進めております。
こうした取組に加えまして、後発医薬品の製造業者などを中心とした製造管理・品質管理上の不正事案が続く中、薬事監視体制の強化を図るため、これまで、通告なしでの立入検査の実施であったり、PMDA、都道府県の調査員への各種研修の充実、公益通報窓口の周知などの取組を行ってまいりました。
今回の改正案におきましては、製造所のリスク評価に基づき、リスクの高い製造所に対して重点的な調査を可能とすることなどを盛り込んでおります。これらの措置によりまして、引き続き、国際整合を図りながら薬事監視体制の強化を図ってまいりたいと思います。
〇委員長(柘植芳文君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。
〇天畠大輔
PMDAに専用の内部通報ホットラインを設置して窓口を一本化し、周知する方が効果的ではないですか。厚労省、いかがですか。
〇政府参考人(城克文君)
お答え申し上げます。我が国における製造管理や品質管理上の不正に係る通報につきましては、これは処分権限を有する厚生労働省や各都道府県の公益通報窓口において受け付けているところでございます。これは必要に応じて当局間で連携をし、適切に対応をしているところでございます。
〇委員長(柘植芳文君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。
〇天畠大輔
せめて現行の内部通報の効果について分析・評価すべきではないですか。厚労省、お願いします。
〇政府参考人(城克文君)
お答え申し上げます。先ほどの繰り返しになるかもしれませんが、実際に製造管理・品質管理に係る不正が発覚する経緯は様々でございますけれども、内部、公益通報を端緒としたものが実際にあるというのも事実でございます。
ただし、詳細につきましては、これは通報者に対する不利益な取扱いを防ぐために詳細についてはお答えを差し控えさせていただきたいと思います。そういう意味で、ご指摘についてはわかりますが、そういうものもあるということのご紹介になります。
〇委員長(柘植芳文君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。
〇天畠大輔
答えになっていません。現行の内部通報の効果について、個人情報に留意して分析・評価すべきではないですか。大臣、お願いします。
〇国務大臣(福岡資麿君)
ご指摘のとおり、分析・評価を行うということは大切だというふうに思っております。そのうえで、しっかり分析・評価行っていきますが、先ほど述べましたように、その発覚の端緒が公益通報かどうかということのそのことが明かすことができませんので、そういったことの公表のあり方等についてはまた別途検討させていただきたいと思います。
〇天畠大輔
質疑を終わります。
〈反対討論〉
〇天畠大輔
薬事承認のゴールドスタンダードを崩す改正には反対です。代読お願いします。
私は、れいわ新選組を代表して「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案」に対して、反対の立場から討論します。
本法案は、医薬品製造販売業者に対する監督を強化するとともに、後発医薬品企業の品目統合・事業再編や創薬の環境整備への財政支援の強化を通して国民に品質の確保された医薬品等を安定供給する狙いがあり、改正の趣旨そのものは賛同できる点があります。
しかし、本法案に盛り込まれている条件付承認制度の適用拡大には賛同できません。条件付承認制度は、ドラッグ・ラグ、ドラッグ・ロス解消に向けて必要な面もある一方、承認後の条件について、検証的臨床試験を必須とする規定はありません。それどころか、申請しなければならない資料の規定から「臨床試験の試験成績」の文言を削除し、要件を省令レベルの規定にすべて落とし込み、国会審議を通さずに変更しやすい立て付けになっています。
法律の条文から「省令落とし」をすることによって行政府が専決できる事柄として囲い込む典型的なやり方であり、看過できません。臨床試験の成績を原則とした薬事承認のゴールドスタンダードが国会審議を経ずに崩されていく危険性が極めて大きいと考えます。
条件付承認制度の適用拡大は、患者の選択肢を増やす意義がある反面、探索的臨床試験から検証的臨床試験を経て承認される薬事承認のゴールドスタンダードを崩し、有効性・安全性の担保されない薬品が市場に出るリスクも相まって、患者をかえって危険にさらす可能性があります。
本日の質疑において倉林明子委員も言及されていましたが、厚生労働省に建てられた「誓いの碑」には、薬害エイズ事件の反省から強い決意が刻まれています。
「命の尊さを心に刻み、サリドマイド、スモン、HIV感染のような医薬品による悲惨な被害を再び発生させることのないよう、医薬品の安全性・有効性の確保に最善の努力を重ねていくことをここに銘記する」
政府はこの誓いに今も忠実だと言えるでしょうか。
安全性・有効性を担保しながら医薬品を必要な人にできる限り早く届けるためにも、薬機法14条3項は維持したうえで、承認後の条件は検証的臨床試験を必須にすると条文上明記すべきです。そして、医薬品の安定供給には、規制緩和ではなく、医薬品製造販売業者に対する査察体制の強化とともに、人材確保を含めた安定した経営に資する財政支援こそ必要と申し上げ、反対討論といたします。