報告③当事者から議員への要望書「5.23院内集会 介助をつけての社会参加の実現に向けて -告示523号の撤廃を!-」(2025年5月23日)

要望書を手交した障害当事者と受け取った国会議員で記念撮影

告示523号の理不尽な利用制限についての国会議員宛て要望書を事前に募ったところ、院内集会当日までに障害者団体15団体と1人の市議から要望書が提出されました。当日は首都圏の当事者中心に12団体と1人の市議が、集まった国会議員らに手交しました。提出された要望書を紹介します(順不同)。

要望書を提出したのは、日本障害フォーラム(JDF)、DPI日本会議、全国自立生活センター協議会(JIL)、全国盲ろう者協会、全国公的介護保障要求組合、障害者の自立と政治参加をすすめるネットワーク、障害連(障害者の生活保障を要求する連絡会議)、しょうがいしゃ大フォーラム、CILふちゅう、自立生活センターCom-Support Project、自立生活センター松山、障害者問題を考える兵庫県連絡会議、千葉市地域で生きる会・成田市・富里市地域で生きる会・千葉「障害児・者」の高校進学を実現させる会、一般社団法人わをん、バリアフリー社会人サークルcolors、豊嶋太一・茅ヶ崎市議会議員でした。

特定非営利活動法人 CILふちゅう(代表 岡本直樹)

私たちは、地域で暮らす介助が必要な障害当事者を支援する立場から、障害者が自らの意思に基づき、学び、働き、社会に参加する権利を保障する制度の実現を強く求めています。

しかしながら、現行制度ではこの基本的権利が著しく制限されており、地域間での格差や制度の形骸化により、深刻な人権侵害が生じています。

つきましては、下記の事項について、早急な制度改正と抜本的な見直しを強く要望いたします。

  1. 厚生労働省告示第523号を撤廃し、重度訪問介護(同行援護・行動援護等)を通学・通勤・政治活動などの外出にも利用可能とするよう、制度の根本的改正を行ってください。
    障害当事者にとって、「学ぶこと」「働くこと」「表現すること」は生きる上で不可欠な活動です。これらを理由に重度訪問介護の利用を制限することは、重大な人権侵害です。
  2. 「重度障害者等就労支援特別事業」を地域生活支援事業ではなく、介護給付として全国一律に適用できる制度に改めてください。
    2024年7月時点で全国61自治体・226名にしか適用されておらず、実効性を欠く上、深刻な地域間格差を生んでおり、この事業は人権保障を建前にした見せかけの制度であり、即刻中止すべきです。
  3. 「重度障害者等大学就学支援事業」の制度を抜本的に見直し、実効性のある支援体制に改めてください。

大学等で学ぶ障害者にとって、介助は不可欠であり、現行制度では地域や財源の制約により継続的な学びが保障されていません。

特定非営利活動法人DPI(障害者インターナショナル)日本会議(議長 平野みどり)

告示523号による重度訪問介護・行動援護・同行援護の 外出制限撤廃を求める要望書

障害者の自立と社会参加を保障する観点から、現行の厚生労働省告示523号(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準)において規定されている「重度訪問介護」「行動援護」「同行援護」(以下、「重訪等」と記載)の外出制限を撤廃し、通勤、通学、就労、修学においても利用可能となるよう、制度を再構築することを強く求めます。

【要望事項】

  • 厚生労働省告示第523号に基づく外出制限の撤廃
  • 就労支援特別事業も大学修学支援事業も、重訪等への一本化により通勤・通学、就労・修学も利用可能なシームレスな支援体制の構築
  • 制度一本化までの自己負担・報酬単価・事業者選択の格差是正措置の即時実施
  • 成績や意欲等によって利用を制限される差別的取り扱いの廃止
  • 国の責任による全国一律の制度設計と、自治体間格差の是正に向けた財政的支援(国庫負担基準の見直し及び雇用保険からの運用等、複数財源の活用)

【要望の背景と理由】

1.超党派の施策合意による制度改革を

障害のある人が安心して地域で暮らし、働き、社会とつながるには、政党や立場を超えた政策的合意が不可欠です。この告示523号の撤廃はこの告示が出された平成18年(2006年)当初から求め続けている大きな積み残し課題の一つです。厚労省もこれまで「重度訪問介護利用者の大学修学支援事業」(以下、修学支援事業)と「雇用施策との連携による重度障害者等就労支援特別事業」(以下、就労支援特別事業)を作り、更に市町村地域生活支援促進事業化して、財政の安定化を図ろうと尽力いただいています。しかしながら実態は厳しいものが多々あり、やはり告示523号の外出制限を撤廃し、重訪等で通勤、通学、就労、修学が可能となるようにすることは、すべての障害者が(障害のない者と)等しく生活の自由と権利を享受するために必要な制度整備です。

障害者福祉、雇用労働、教育、人権など関係省庁の横断的な課題でもあることから、超党派による政策合意にご尽力いただきますようお願いいたします。

2.重度訪問介護等への一本化によるシームレスな支援体制の構築を

重度障害者の生活全般を支援する介助制度として重度訪問介護等があるが、就労分野については重度障害者等就労支援特別事業(通勤含む)、重度訪問介護サービス利用者等職場介助(通勤援助)助成金、その他にも重度訪問介護等を利用していない障害者を対象とした従来の職場介助助成金があり、大学等の高等教育における介助制度として、大学修学支援事業が創設されている。

今まで利用できなかった場面での介助制度の創設は一歩前進ではあるが、制度が分けられていることによって、生活の軸として契約している重度訪問介護等事業所が必要なサービスを全て提供しているという条件が必要かつ、当該事業所が企業(JEED制度の契約)、または学校(学内介助の契約)が当該事業所と契約していないかぎり、制度のつなぎ目による介助者の変更が生じることになる。

そうなることで、急な仕事の勤務時間や場所の変更や、体調不良による欠勤などの際にキャンセルを行った場合、重度訪問介護事業所と別の介助制度で契約している事業所(JEEDによる制度の場合は企業による委託事業所)の体制がかみ合わないかぎり、空白の時間ができてしまう。

日々、長時間介助を利用しながら生活している我々重度障害者の感覚からすると、急な変更を同時に別の事業所間で対応できる確率は極めて低く、調整できたとしても引き継ぐまでの時間に生じる空白は避けられない。

そもそも、重度訪問介護等利用者を対象としている制度であるため、長時間介助が必要な重度障害者を対象にしているはずであり、同一の制度でシームレスに支援が必要であるのは明白である。予め人材の確保調整可能となる。

重度訪問介護と就労支援特別事業、または重度訪問介護と修学支援事業を同時に登録している事業所がない(少ない)地域の場合は、別の事業所を選ばなければならなくなり、そうした場合には、急な変更に対する対応ができず介助の空白時間ができてしまう。

また、事業所においても制度の請求先が異なるため、利用者や事業者に過度な事務負担と制度的な断絶を生んでいます。重度訪問介護等に統一すれば、そうした不便さから解放され、安心して生活と就労、修学を両立することが可能となり健常者と同じ権利を行使することができます。

3.地域格差のない全国共通の制度設計を

① 地域間格差による権利の課題

就労支援特別事業や修学支援事業は市町村事業であり、制度実施の有無・運用・報酬・負担金が自治体ごとに大きく異なります。結果として、「どこに住んでいるか」によって、制度を利用できるか、利用できる支援の質・量に大きな差が生まれ、障害者の「労働と教育」という生存権と並ぶ権利が地域によって左右されているのが現状です。

障害者が通える環境が整った場が現在の社会においてもとより少ない中、特に自治体による制度の実施の有無については、就職活動における企業の選択肢、受験における学校の選択肢を更に狭いものにし、職業や大学等(学部・専攻)を、公正に選ぶことができない状況に取り残されている現状があります。

② 積極的に障害者雇用している企業や入学を進めている高等教育機関に波及する課題

利用できる事業所が存在しない場合には、重度障害者の雇用(入学)に積極的な企業や大学等が、介助職員を自ら職員として配置するケースがあります。しかし、ヘルパー事業所のように複数の介助者が常勤しているわけではないため、支援が属人的になりがちであり、当該職員が退職した際に交替ができないという課題があります。

一方で、雇用した介助職員が必要とする障害者本人が退職(卒業等)・休職(休学・休暇等)などにより不在となった場合には、その職員の配置を続けられず、異動や契約解除を余儀なくされるという課題もあります。このように、次の利用者となる障害者の存在が確定できない状況では、介助体制も雇用も安定させることが難しいのが実情であり、企業や大学等による介助者の直接雇用はその場しのぎでしかありません。

そして、企業や大学等の評価する側の立場の者が、介助という障害者にとっての生命線を握る「介助の契約主体」となることは、生産性が介助の必要性に影響しかねず、優生思想を根絶する優生保護法裁判の基本合意の趣旨に反するものであるため、本人を主体した生活の一部として介助が使える形、すなわち重度訪問介護への一本化が必要と考える。

4.成績や意欲等によって利用を制限される差別的取り扱いの廃止を

修学支援事業では、「前年度の修得単位が皆無または極めて少ない者」「学修の意欲に欠ける者」等を支援対象から除外する規定があります。これは障害者にのみ課せられる不当な差別的取り扱い、教育を受ける権利の侵害であり、多様な者にとって人間関係の構築や学びの機会を奪う制限です。奨学金と条件を並べたと見えるが、奨学金の条件は同等に障害者にも適応されるわけであり、介助制度は学内での食事、排せつ、学習に必要な支援など、生存権にかかわる明らかに違う性質のものだと考えます。したがって、教育を受ける前提として必要となる介助制度において、「学習の意欲や成績」という特定の条件を課せる取り扱いは廃止し、特別な条件を付された制度ではない形で重度訪問介護に一本化すべきだと考えます。

5.制度一本化までの経過措置の整備が急務

① 自己負担の重複という深刻な格差の是正

現在、重度訪問介護等と就労支援特別事業または、修学支援事業を併用する場合、それぞれに自己負担が生じ、自治体によっては合算で月額74,800円、年額約90万円にものぼるケースがあります。一方で、別の自治体では月額3,000円とされており、同じ支援を受けるにもかかわらず、居住地によって負担額に大きな差が生じている。これは「収入を得るために働くことで負担が増える、または、勉学に励むことで負担が増える社会保障として逆進的な構造であり、労働の義務を果たすために利用料を支払う差別的状態にあります。また、負担額の基準は本人収入ではなく配偶者を含む世帯収入で決定される点では、障害者にとって差別のハードルが高い婚姻をさらに遠のかせる一因にもなります。このような格差は、就労支援特別事業のみならず、修学支援事業を利用する際にも、本人や家族の負担として重くのしかかり、障害=マイナスという価値観を助長しています。この自己負担の問題についての解決策は、告示523号の外出制限の撤廃に他ならないと考えます。また、重度訪問介護等への一本化が実現するまでの間については、重度訪問介護等を利用していることを前提とする制度であるため、自己負担の二重取りにならないよう市町村に通知が必要と考えます。

また、JEEDによる重度訪問介護サービス利用者等職場介助等助成金による1割負担は企業にとって抑制要因の一つとなっており、新規雇用者のみでなく、既に雇用している障害者の制度利用に対して消極的であるという事例も散見されている。

このように、特に就労においては、公的支援が前提となるべき介助を、利用者や企業に負担させる仕組みになっていることは、制度の利用促進のみならず、障害者の雇用促進そのものに繋がり難いという課題が生じています。

② 報酬単価の是正と市町村への補助の必要性

就労支援特別事業および修学支援事業の単価は市町村により異なりますが、低い市町村では1800円/時程度。本体の重度訪問介護では処遇改善加算や特定事業者加算、重度加算、地域加算、移動加算などの加算があるため、単価は3,000円ほどになります。これにより、就労支援特別事業を担う事業者は増えず(現れず)、制度があっても、「就労も、通学もできない」という事態に直面しかねません。これについて、小規模な市町村の財源だけでは引き上げることは実現困難と予想されるため、重度訪問介護に一本化されるまでの措置として、市町村に対して価格是正のための財政的な補助が必要と考えます。

③ 事業所選択の自由が保障されない自治体運用の是正

一部自治体では、契約する事業所を自由に選べず、旧来の「措置制度」と類似する運用がなされています。具体的には、緊急時も含めて24時間365日対応可能な重度訪問介護事業所がないことによって立ち上げた介護事業を運営する障害当事者やそこに雇用されている障害者は、当該の事業所とは契約できないという制限を設けているところがあります。(現在は他の事業所がないという理由で特例措置として利用可能とされている。)

この制限は、障害者権利条約の趣旨である自由と選択に反した自己選択権と自己決定権の重大な侵害であり、この制限が適応されることによって、前述のシームレスな支援を受けることができなくなる。

そのようなことが起こらないように、「必要な支援を選べなくなるような過剰な制限」を削除するよう、国から市町村にむけて、広く通知を発出していただきたいと考えます。

日本障害フォーラム(JDF)(代表 阿部一彦)

平成18年厚生労働省告示第523号利用制限削除のお願い

日頃より障害者の社会参加と権利の推進にご尽力頂きありがとうございます。

さて、平成18年厚生労働省告示第523号(以下、「厚労省告示523号」)では、重度訪問介護、同行援護、行動援護において、「通勤、営業活動等の経済活動に係る外出、通年かつ長期にわたる外出及び社会通念上適当でない外出」は利用できないという制限が設けられております。

働くための通勤、学ぶための通学、生活するための経済活動、通院を含む社会参加のための通年に渡る外出等は、障害の有無に関わらず社会生活を送る上で必要不可欠なものです。介助が必要な重度障害者にとっては、外出時に介助者の同行は不可欠です。

障害者権利条約では、障害者が他の者との平等を基礎として移動の自由についての権利を有することを認めており(18条)、「締約国は、障害者自身ができる限り自立して移動することを容易にすることを確保するための効果的な措置をとる」(20条)ことを求めております。

2022年に障害者権利委員会が日本政府に出した総括所見では、43(a)「法的な制限が、地域生活支援サービスを、通勤や通学、又はより長い期間を目的に利用することを許容しない」ことを懸念するとし、44(a)で「全ての地域における障害者の移動が制限されないことを確保するために、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律の下での制限を撤廃すること」とし、厚労省告示523号の利用制限の撤廃を勧告しています。

厚労省では、「雇用施策との連携による重度障害者等就労支援特別事業」と「重度訪問介護利用者の大学修学支援事業」を創設しましたが、いずれも利用できる自治体は非常に少なく、広がっておりません。

このような状況を踏まえて、全ての障害者が目的によって制限されることなく、必要な介助を得て移動ができるように、厚労省告示523号の利用制限部分を削除して頂きますよう、お願い申し上げます。

全国自立生活センター協議会(JIL)

学び、働き、安心して暮らせる毎日のために—— 障害のある人の生活と就労を支える制度の見直しをお願いします ——

私たちは、どんな重度な障害があっても地域で当たり前に生活し、障害者権利条約の完全実施に向けて障害のある人とない人が分け隔てられることなく、誰もが差別されず、共に生きられる社会(インクルーシブな社会)を目指して活動する障害当事者団体です。全国110か所を超える障害当事者団体(自立生活センター)で構成しています。

私たちは、介助が必要な人もそうでない人も、誰もが安心して学び、働き、地域で自分らしく暮らしていける社会を心から願っています。

しかし現在の制度では、通勤・通学や地域での活動に必要な介助が十分に保障されておらず、住んでいる地域によって支援のあり方に大きな差があるのが現状です。こうした制度の不公平さに、不安や困難を抱えている方が多くいます。

つきましては、下記のとおり制度の改善を心よりお願い申し上げます。

  1. 「重度訪問介護・同行援護・行動援護」を、通勤・通学・社会参加に安心して使える制度に見直してください

職場や学校、地域活動の場でも、日常生活と同じように介助は必要です。学び、働き、社会とつながることは、私たちの人生にとって欠かせない営みです。

「仕事中でもトイレや食事、姿勢の調整は当たり前」という声の通り、こうした基本的ニーズに加え、医療的ケアが必要な方も安心して活動できるよう、制度をしっかり整えてください。

  • 「重度障害者等大学就学支援事業」「重度障害者等就労支援特別事業」を、全国一律で使える介護給付へと見直してください

通勤や通学に必要な支援が、住む地域によって大きく異なる現状は、明らかな不公平です。誰もが平等に、安心して学び・働けるよう、制度の根本的な見直しを強く求めます。

しょうがいしゃ大フォーラム

告示523号の外出介助の制限規定は、違憲、障害者権利条約違反-直ちに撤廃のための行動をお願いします-

わたしたちは、しょうがいしゃが分け隔てられることのない社会を作るために活動しています。2011年8月に、障害者制度改革推進会議・総合福祉部会が発表した「障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言」(骨格提言)と、2022年10月に発表された国連の障害者権利委員会からの総括所見に基づく制度の実現を目指しています。

しょうがいしゃが分け隔てられることのない社会とは、子どもの時から近所の子どもたちと遊び、暮らす地域の学校に通い、労働、近所づきあい、観光や娯楽など、人生のあらゆる場面で、分け隔てられることがなく参加し、享受できる社会、ということです。

これが障害者権利条約の一般原則を定めた第三条の(C)の「社会への完全かつ効果的な参加及び包容」ということであり、障害者基本法第一条の「障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会」も、この意味だと思います。

 こうした社会にしょうがいしゃが関わっていくためには、それぞれの状況に応じた介助が必要となります。こうした必要性を満たすために、公的介助を保障していく責務が、国にはあります。しかし、厚生労働省は、これを妨害する姿勢を取っています。告示523号が、日本の障害者権利条約締結後も効力を持ち続けているのは、まったく理不尽としか言えません。

重度訪問介護、同行援護、行動援護による外出介助について、告示523号は、以下のような不当な制限を課しています。

「通勤、営業活動等の経済活動に係る外出、通年かつ長期にわたる外出及び社会通念上適当でない外出を除く。」

 そして、自治体の判断であるはずの、地域生活支援事業にも、この基準が適用されてしまっている実態があります。

 日本国憲法第二十七条は、勤労の権利と義務を規定しています。そして、障害者権利条約第二十七条は、締約国がしょうがいしゃの労働する「権利が実現されることを保障し、及び促進する」ことを規定しています。

 告示523号の「通勤、営業活動等の経済活動に係る外出」を、公的介助の対象としない、ということは、違憲であり、かつ、障害者権利条約違反であることは明白です。 

「重度障害者等就労支援特別事業」など、地域生活支援事業の任意事業という自治体の方針に左右される制度では、けっして、国が介助を含めた労働の権利保障を行っていることにはなりません。この事業を実現するために、しょうがいしゃが苦労しなければならないことこそが、間違っています。労働のための外出や労働現場での介助については、「通年かつ長期にわたる外出」になることは当然です。

また、日本国憲法第二十六条の教育を受ける権利を保障しようとすれば、「通年かつ長期にわたる外出」の介助も必要な人もいます。したがって、「通年かつ長期にわたる外出」の否定は、教育の権利を否定することになってしまいます。

 また、「社会通念上適当でない外出」とは、まったく不明瞭であり、介助支給を行う自治体の恣意的な判断による介助制限となってしまう場合があります。そもそも、違法行為以外の公的介助は行うべきです。そうでなければ、しょうがいしゃの社会参加を妨げてしまうからです。

 自治体によっては、選挙での投票の介助さえみとめていない所があるとのことです。日本国憲法では、しょうがいしゃも含めた国民に、選挙権、被選挙権を与えています。

障害者権利条約第二十九条では、締約国がしょうがいしゃの政治的権利を保障し、政治活動も含めて奨励することが規定されています。選挙権・被選挙権はもとより、国の機関で活動すること、非政府組織や政党、しょうがいしゃ団体の活動も含めた政治活動を、奨励すべきであるとしているのです。

こうした違憲状態、条約違反状態を作り出しているのは、国の責任です。

日本は、2014年に障害者権利条約を批准しました。それは、第四条の1項の「障害に基づくいかなる差別もなしに、全ての障害者のあらゆる人権及び基本的自由を完全に実現することを確保し、及び促進することを約束」することでした。その約束の中には、同条同項(b)の「障害者に対する差別となる既存の法律、規則、慣習及び慣行を修正し、又は廃止するための全ての適当な措置(立法を含む。)をとること。」が規定されています。

 障害者権利条約批准から11年。告示523号の公的介助の制限が、いまだに存続していること自体が許されません。日本国憲法は、「国会は、国権の最高機関」と位置付けています。その国会が厚労省のこの告示の撤廃ができないなどということがあってはなりません。国会議員の皆さんのご奮闘を期待いたします。

 

バリアフリー社会人サークルcolors(代表 石川明代)

私どもは、【告示523号の完全削除】を望みます。
他の障害者団体も多くの意見を出すことと思われます、私たちはそれに賛同します。
私たちは特に、この告示によって、障害者への偏見・差別が広がっている現状をお伝えしたいと思います。


「働かざる者食うべからず」
「働きもしないのに生きているのは社会に無駄な人間」などの 言葉や思想があります。

働けない人も働かない人もいます。 そして、「告示523号により、働きたくても働けない人」は、数多くいます。
告示523号により働きたくても働けない人たちは、 世間からお荷物のような目で見られたり、そのような言葉を周囲の人から浴びせられたり しながら生きています。


これは、本人の責任ではありません。
けれど、本人が偏見や差別の対象となり、辛い思いをしています。
社会の中に、人間への偏見・差別を助長するような告示があって良いわけはありません。
障害者差別が進む社会にならないように、どうぞ、告示523号の完全削除を、お願いいたします。

一般社団法人わをん

告示523号における当事者への社会参加を制限する事項撤廃への要望書

 平素より市民の豊かな生活実現のためにご尽力下さる議員各位に深く感謝申し上げます。一般社団法人わをんは、重度身体障害者とその介助者が中心となって設立した団体として、これまで介助が必要な当事者の自立生活実現に向けて取り組んで参りました。

 さて、現在障害者総合支援法における重度訪問介護サービスは、日常的に介助が必要な重度障害者にとって無くてはならない、極めて重要な公的介助制度です。しかし、重度訪問介護や行動援護、同行援護においては、通勤、通学、就労、就学中などにおいてヘルパー利用が制限されており、当然人として認められるべき社会参加が認められていない状況です。それは、社会参加をしたい当事者はヘルパー利用を断念しなければならないという、「生存権の侵害」にもあたります。

 このような状況のなか、当団体を含む多くの障害当事者団体の要望を受けて、「雇用施策との連携による重度障害者等就労支援特別事業」がスタートしたことは、就労中の介助利用に道を開くものであり感謝申し上げます。

 しかしながら、就労中の介助利用に向けて課題が山積しており、根本的解決には程遠いと言わざるを得ません。特に本事業は自治体判断で導入の有無が決まるため、住む場所によって格差が生まれています。障害者権利条約でも当然認められている、「働きたい」と願う重度障害者の権利を保障し、そして制度が整えばぜひ「働いてほしい」と考えている雇用主の後押しに国が率先して取り組むよう、課題解決に向けて下記の点、議員の皆様は何卒ご高配くださいますようお願い申し上げます。

  1. 重度訪問介護、行動援護、同行援護における「通勤、営業活動等の経済活動に係る外出、通年かつ長期にわたる外出及び社会通念上適当でない外出」の利用制限は、障害者の社会参加を阻むものであるばかりか、当事者の生存権の侵害にもあたるため、利用制限の撤廃に取り組んでください。
  2. 利用制限見直しに向けた政策形成過程においては、必ず多様なバックグランドを有する当事者参画による検討会を設置してください。

  以上につきまして、今後の課題解決にむけて大きな前進があるような取り組みをしてくださいますよう、お願い申し上げます。

茅ヶ崎市議会議員・豊嶋太一

告示523号撤廃に関する国会議員宛の要望書

平素より、議会の円滑な運営に向けてのご尽力に対し、心より感謝と敬意を表します。

 私は、「筋萎縮症」ウェルドニッヒ・ホフマン病の障害があり、電動車椅子等での移動となる為、議場、委員会室等の入退室及び議席への着席の介護等、病状及び障がいを理解している介護者を私個人の費用負担で依頼してきました。一方、これまでの要望に対して委員会視察及び会派での行政視察については、議会費及び政務活動費として介護者の旅費等が認めていただけた事に感謝致します。

 また、「障害者の自立と政治参加をすすめるネットワーク」の会員としても活動し、2018年7月12日には全国市議会議長会に対し、「障害当事者議員に対する合理的配慮の必要性について」ご提言申し上げる等、それぞれに必要な合理的配慮について共有をしているところです。

 そのような中、参議院議員選挙において全身性の障害当事者が当選し、議員活動における介護保障に対する新たな整備の取り組みとして介護者費用の公費負担の措置が行われた事は、様々な立場の人が議会へ参加をする為に重要な措置であります。

政府も昨年12月27日に、「共生社会の実現に向けた対策推進本部」(本部長・石破茂首相)を官邸で開き、障害者への差別や偏見を解消するための行動計画を決定しました。

 ほとんどの自治体において、障がい当事者議員の介護者の人件費を議員個人で負担しているなか、昨年一般市において初めて東京都の「小金井市議会」が、介護費用の公費負担を認める事例が出て来ました。

 つきましては、合理的配慮に基づき市民からの負託を受けた議員として、職務を果たし継続した議会及び、議員活動が行なえるよう、改めて国会をはじめとした全ての議会に対し、要望書の提出をさせて頂き、介護者費用の公費負担の実現についてお願い申し上げます。

【参考】議員活動実会議時間(令和6年度)

本会議          67時間33分

常任委員会        11時間42分(環境厚生)

全員協議会         9時間56分

議会制度検討会      11時間53分

議会報告会・意見交換会   6時間

合計時間       約106時間24分               

自立生活センターCom-Support Project(代表 齊藤輝幸)

重度障害者等就労支援特別事業並びに重度障害者大学等修学支援事業は事例が少ないため自治体の承認も前例が無い、他の自治体でもやっているのが出来ない等のネガティブイメージが強く表れて受け入れのハードルが高いです。

また、基本的な行動・支援は変わらないのに重度訪問介護等の報酬より単価が安くなってしまうことから、事業所からもあまり良い顔をされないため心理的にも制度が使いにくいです。

特定非営利活動法人自立生活センター松山(理事長 加藤陽子)

わたしたちは、どんな重度の障害があっても、地域で当たり前に暮らしていくことができる社会の実現に向けて活動している団体です。

しかし、障害者総合支援法にかかる厚生労働省告示523号にある文言によって、就労・就学・政治活動などといった外出に利用できない現状があります。一方地域生活支援事業として、「重度障害者大学等修学支援事業」や「重度障害者等就労支援特別事業」がありますが、愛媛では実施されていないことによって、人権に自治体格差が生じています。

しかも「重度障害者等就労支援特別事業」は自治体によって運用も異なっていること、またJEEDの補助金と組み合わせて利用しなければならないことから、実際利用しても事務作業が煩雑で現実的に利用するにも不便極まりないものであることは明らかです。

日本国憲法や障害者権利条約、それに基づく障害者基本法、そして障害者総合支援法による重度訪問介護の制度であると理解していますが、厚生労働省告示523号は、それと逆行するものであり、国として、人権保障の観点から制度改正を早急に進めていただきたく存じます。

また現在特別支援学校等に通う生徒たちにとって、重度訪問介護を受けながら働けるということは、その一人ひとりの将来の希望の芽を摘むことなく、生きること、はたらく夢を描くうえで欠かせないことです。

わたしたちの団体においては、サービスの受け手である障害者自らが担い手となって運営をしていることから、自団体による持ち出しで働く障害当事者の介助保障を実現しています。しかしそれでは、わたしたち以外の同じ障害をもつ仲間の働く時間における介助保障が実現されているというわけではありませんし、わたしたちの団体が経営難で存続できなくなれば、その瞬間、わたしたちも働くこともできなくなるということを意味しています。自団体において、障害当事者がそれぞれ働いている時間にどのような介助を必要としているかについては、別途以下に記載いたします。

障害がなかったら当たり前にできることも、わたしたちは介助者がいないと何もできません。以上のことから、厚生労働省告示523号の撤廃を要望いたします。どうぞよろしくお願いいたします。

  • 障害名:脳性麻痺

【自立生活センター松山において働く障害当事者の事例】

私は、現在、自立生活センター松山で週に5日1日6時間働いている。

就労中に介助に入る必要性として、体調不良時や災害時に本人自身だけでは対応できない。介助者が常に隣にいることでいざという時に助けてもらえるという安心感がある。

常時、以下のような介助が必要である。

タイムカードを押す

更衣

書類整理(ファイリング、ホッチキス止め)

靴を履かせる

お弁当を机に運ぶ

転倒時の起こしてもらう

水を入れてもらう

会食時、食べやすいようによそう、ご飯を最後食べさせてもらう

車の移動

これらは、常に体調がいい時においての介助であり、体調不良の場合や災害時、緊急時の場合などはこれ以上の介助が必要となる。

このようなことから告示523号は撤廃を要望する。

  • 障害名: デュシェンヌ型筋ジストロフィー

常時、以下のような介助が必要である。

・車で送迎(職場と自宅の往復)

・体位交換(リクライニングなど)

・採尿

・食事/水分補給(胃ろう)

・吸引

・パソコン/周辺機器の準備

・操作補助

・ベルトを締める/緩める

・右側のあばらを浮かして除圧

・足/腕の屈伸

・ヘッドレスト/頭の位置調整

・腕の位置調整

・呼吸器等の電源確保

  • 障害名:脳性麻痺、知的障害

障害があっても仕事がしたいです。しかし現在は重度訪問介護では仕事中では介助者がつかえません。仕事中でも私はたくさんな介助が必要です。介助者がいないと他のスタッフの仕事をみながら介助をたのむことになるので、気をつかったり自分のぺースで動くことができません。

常時、以下のような介助が必要です。

・上着を脱ぐ

・車いすから椅子に移動

・資料やスマホや手帳やパソコンの用意など

・トイレ介助

・資料を読んでもらう

・パソコンで資料を作る介助

・メールや文章を読んでもらう

・会議室への移動

・水分補給、食事介助

・お弁当を出して温める

・お弁当箱をあらう

・薬を飲む

・歯磨き

・電話のときの通訳

・わからない文章を分かりやすく説明してもらう

・おやつのときの介助、コーヒを入れる、お菓子を食べる

・帰る用意の準備、片付け

障害者問題を考える兵庫県連絡会議

日頃より、障害者福祉政策の推進にご尽力いただきありがとうございます。

現在、私たちは「重度訪問介護」と「重度障害者等就労支援特別事業」の両制度を活用し、介護者の支援を受けながら就労しております。しかし、両制度を併用することで、二重の自己負担が発生しており、家計に大きな負担となっています。

たとえば神戸市では、重度訪問介護と就労特別支援事業それぞれに月額9,300円の自己負担が課されており、合計で月18,600円の支出になります。これは、障害があっても働きたいという意欲を大きく損なう要因となっています。

同様の地域生活支援事業である「ガイドヘルプ(移動支援)」については、重度訪問介護と統合して負担が一本化されています。なぜ就労に関してだけ、制度が分かれて二重負担になるのかという疑問に対し、「制度が違うから」との説明のみでは到底納得できません。

就労の際にも介護が必要であることは明らかであり、本来であれば、重度訪問介護の枠内で「就労中の介護」を認めていただければ、一つの制度の中で完結し、利用者の負担も軽減されます。

また、週10時間以下の非常勤・パートタイム等の短時間就労を希望する障害者も多く存在しますが、現在の制度では一定以上の就労時間を前提とする取り扱いが見られ、柔軟な働き方を阻む一因となっています。障害者一人ひとりの事情に応じた就労形態を尊重し、多様な働き方が可能となる制度設計が求められています。

つきましては、以下の点を国としてご検討・ご対応いただきたくお願い申し上げます。

【要望内容】

  1. 重度訪問介護制度の中で、就労中の介護利用を明確に認めてください。→これにより、二重負担の問題を根本から解決できます。
  2. 上記が困難な場合は、各自治体に対して、就労支援における自己負担軽減(もしくは一本化)を可能とする方針の徹底を図ってください。
  3. 地域間格差(例:豊中市・高槻市・吹田市・堺市などのように自己負担が軽い自治体との差)を是正してください。
  4. 非常勤・パートタイム等の短時間就労を希望する障害者も柔軟に支援できるよう、「就労時間に関する制限の撤廃・緩和」を検討してください。

「働きたい」という当事者の前向きな意思が、制度の壁によって挫かれることのないよう、国の責任において柔軟かつ公平な制度の運用をご検討いただければと存じます。何卒よろしくお願い申し上げます。

障害連(障害者の生活保障を要求する連絡会議)(代表 尾上裕亮)

厚生労働省告示523号の即時撤廃を求める要望書
私たち障害連は、障害の重い人、病気を持つ人たちが社会の中で人間としての尊厳をもって生きていけるように、権利と制度基盤の確立を求め運動をしている当事者団体です。

厚生労働省告示523号では、障害福祉サービスの制度説明で次の記述があります。


「重度訪問介護の中で居宅における入浴、排せつ又は食事の介護等及び外出 (通勤、営業活動等の経済活動に係る外出、通年かつ長期にわたる外出及び社会通念上適当でない外出を除く。以下、同行援護・行動援護においても同じ)」


私たちは、長い間、この括弧の削除を求めてきました。可及的速やかに無くすべきであると強く要望します。
地域で暮らす障害者にとって、重度訪問介護、訪問介護、同行援護、行動援護は、生活を営む上で重要な支援です。その支援を、国が用途によって制限することは憲法に背くものです。福祉サービスを使う人は、労働する権利や学習する権利はないのでしょうか。だとすれば、人権侵害です。


同規定があるため、働きたくても就労できない、学びたくても学校に行けない人が多くいます。自治体の制度や民間制度を使えば、仕事・学校でも介助をつけることも出来ますが、住むところによって使えなかったり、手続きが難しいです。告示523号は、今すぐ撤廃すべきです。

障害者の自立と政治参加をすすめるネットワーク(代表 熊本市議会議員 村上ひろし)

告示523号撤廃に関する国会議員宛の要望書~住民負託を受けた議員として障害がない議員と平等に活動できる環境整備に向けて~

 平素より、地方自治の円滑な運営に向けてのご尽力に対し、心より感謝と敬意を表します。

 私たちは障害当事者の議員や立候補予定者、障害者の政治参加に関心を持つ関係者で構成する団体です。

 わが国では、2011年8月には障害者基本法が改正施行、2014年1月には国連障害者権利条約を批准、2014年6月には障害者差別解消法が成立、2016年4月施行しました。国連障害者権利条約は、障害者の人権や基本的自由の享有を確保し、障害者の固有の尊厳の尊重を促進するため、障害者の権利の実現のための措置等を規定した、障害者に関する初めての国際条約で、市民的・政治的権利、教育・保健・労働・雇用の権利、社会保障、余暇活動へのアクセスなど、様々な分野における取組を締約国に対して求めています。この条約が求める「障害がある者とない者との平等な環境」を整備すべく、先述の2つの法律を含めた国内法の障害に対する捉え方を「医学モデル」から「社会モデル」へとパラダイムシフトしました。さらに、法律を補完すべく、全国各地で条例が制定施行されています。

 このようななか、障害当事者議員が日常の議員活動を遂行しにくい状況を改善すべく、会員への調査を行い、2018年7月12日に、全国都道府県議会議長会、全国市議会議長会、全国町村議会議長会に「障害当事者議員に対する合理的配慮」についてご提案させていただきました。

 その後、2019年の参議院選挙において3人、また2021年の衆議院選挙において1人、2022年の参議院選挙において1人の障害当事者が当選しました。これを契機に、障害当事者が議員として活動していくために必要な介助の必要性が議論され、重度障害者が就労するために必要な介助を重度訪問介護で対応できるようになるなど、少しずつ改善しているものの、十分ではありません。

 いまだに、障害者が初当選すると、合理的配慮を得るまでに多くの時間と労力を自ら割かなければならない状況です。他の議員の障害理解に左右されることも多く、議会による差が大きい実態がわかっています。他の議員と平等に活動できる環境を得られず、十分な議員活動ができないことは、当選した議員として住民の負託に応えられず、忸怩たる思いです。

 障害者議員が当選するたびに各地で繰り返されるこの状況は、障害者差別であり、住民負託に応える議会の機能を十分はたせずにいると私たちは憂えています。多様な住民が議会に参画するために、必要な合理的配慮を行うよう、2024年7月30日に総務省に対し要望し、同年11月29日に開催された「地方議会活性化シンポジウム2024」で障害当事者議員の現状と課題を取り上げて頂くなどの一定の成果はありましたが、根本的な解決には至っていません。

 国連障害者権利条約が求める「障害がある者とない者との平等な環境」を就労分野においても整備する必要があります。この度主催頂いた舩後、木村、天畠参議院議員も本会の大切な仲間です。

 是非とも、ご高配のほどお願い申し上げます。

千葉市地域で生きる会(代表 高村リュウ)、成田市・富里市地域で生きる会(代表 渡邊みさ)、千葉「障害児・者」の高校進学を実現させる会 (代表 小山薫)

私たちは、障害児者が、小学校中学校の普通学級で学び、その先の高等学校、大学、各種学校等においても、障害のない人と分け隔てられることなく一緒に学び生きていく事を願って、障害当事者とその保護者が中心メンバーとなって活動している市民団体です。障害の有無によって分け隔てられることなく一緒に学び、生きていく社会の実現を願い、下記要望いたします。ぜひ実現されますようお願いいたします。

【要望事項】

  • 小学校、中学校、高等学校、大学等への通学時に自力での移動が困難な障害児者が、保護者の付き添いなく通学出来るように、また通学時の介助費用の保護者負担なく通学できるように法整備を行ってください。
  • 全国どこでも通学に移動支援が利用できるようにし、利用時間数の上限を、通学にかかる時間と通学日数を考慮した時間数または上限をなくすようにしてください。
  • 重度訪問介護利用者等大学修学支援事業について、早生まれで、成人に達する誕生日が大学入学日に近い場合は、みなし成人として早めに重度訪問介護の認定が受けられ、誕生日による差がなく大学入学時から利用できるように制度化してください。

《要望の理由》

要望1について 地域生活支援給付の移動支援は、通学について「外出先の機関等が当該移動の保障を行うべき外出」とし、義務教育の小中学校(設置者である市町村)が移動の保障を行うべきとしているため小中の通学では原則使えず親の入院等でも利用は3ヶ月程度という制限があります(千葉市の場合)。しかし千葉県内では小中学校が障害児の通学を保障している例を聞きません。高校、大学についても原則標準支給量の範囲でしか使えず到底毎日の通学をカバーできません(千葉市の場合)。しかし高校、大学が障害児者の通学の保障をしている例も聞きません。福祉と教育が互いに障害児者の通学を巡って責任を押し付け合っているように見えます。そのしわ寄せは障害当事者と保護者等家族に来ています。千葉県では公立小中学校(特別支援学校除く)に通学する障害児童生徒の通学に付き添いを行っている保護者は1376名(R6年5月1日時点千葉県議会事務局調査)です。高校や大学では通学で保護者が毎日片道1時間以上の付き添いする事もあります。保護者は一旦自宅に戻ってからまた迎えに行くため一日6時間を子どもの送迎に使う例もあります。交通費の負担も大きいです。公的な通学の保障が無いということは、保護者が送迎できなくなれば子どもは学校に通うこともできなくなり、学ぶ権利が奪われることになります。また保護者は通学の付き添いのために仕事を制限したり変更を余儀なくされることもあり、親の働く権利の侵害であり、付き添いは母親であることが多く、女性差別でもあります。高校の場合では、知的障害があり点数が取れない子は定員割れする学校が近隣になく、遠方の学校に通わざるを得ないという現状もあります。障害があり通学が大変なのに、さらに遠方で自力では通えず、介助者費用に介助者の交通費と時間の負担が家庭に生じます。介助者を頼めない場合は障害がある子は学校に通えないか、家族が介助を担うしかありません。介助者には家族内の母親がなる場合が多いですが、仕事をすることに時間的な制約が生じるため社会保険に加入出来るくらいの給与が得られる仕事に就けず将来低年金受給者になるリスクは免れません。現在社会で問題になっている中高年女性の低年金による貧困問題とも地続きです。支援が必要な人の介助負担を家族の無償の働きに任せ、労働力の搾取を続けないようにしてほしいです。

解決法として「学校設置者が通学支援のための人材を直接雇う」、「移動支援を通学で必要時間数が使えるようにしたうえで学校設置者がヘルパー事業者と契約する」などの方法が考えられると思います。医療的ケア児の看護師配置については法的にも整い、公立の小中高では学校設置者による看護師の直接雇用や訪問看護ステーションとの契約によって保護者の金銭的な負担無しで医療的ケアが受けられるようになってきています。障害児者の通学についても同様に、小中高では保護者の付き添い及び介助費用の負担なく通学できるように法整備して頂きたくお願いします。

要望2について 障害を理由に学ぶことを制限することはあってはならないことです。障害児者も不登校になったり高校で定員内不合格とされて中学校卒業後に浪人生活を余儀なくされてフリースクールに通ったり、と様々な事が起きています。また本人のやりたいことや学びの場も多様化しています。障害が重度でなくても自力での移動が困難な障害児者も多くいます。住んでいる自治体によって運用が違うのも納得出来ません。全国どこでも移動支援の対象から通学を外したり時間制限をせずに、いつ何処で学んでも、通学に必要とするだけの時間数が支給されるようにしして頂きたくお願いします。

要望3について 重度訪問介護の認定には数ヶ月間かかることがあります。そのため大学入学と同時に重度訪問介護利用者等大学修学支援事業を利用しようとする場合は高校3年生が受検の前年中に手続きを開始しなければ間に合いません。特に早生まれで成人年齢である18歳に達していない場合は、早めに行政窓口に相談に行っても手続きが進まないことがあります。みなし成人として早めに重度訪問介護の認定が受けられ、誕生日による不利益を被ることなく大学入学時から重度訪問介護利用者等大学修学支援事業の利用できるように制度化していただきたくお願いします。

社会福祉法人全国盲ろう者協会(理事長 真砂靖)

平成18年 厚生労働省告示第523号利用制限削除のお願い

 日頃より盲ろう者福祉向上に多大なるご尽力を賜り、誠にありがとうございます。

 さて、私ども、目と耳の両方に障害のある盲ろう児・者は、平成18年 厚生労働省告示第 523号(以下、「厚労省告示523」)にある、障害者総合支援法にもとづく障害福祉サービスである同行援護、重度訪問介護等において、「通勤、営業活動等の経済活動に係る外出、通年かつ長期にわたる外出」は利用できないという制限が設けられているため、働くための通勤・通所、学ぶための通学、生活するための経済活動、通院を含む社会参加のための通年に渡る外出等が大きく制限されています。

 また、同法の地域生活支援事業である「盲ろう者向け通訳・介助員派遣事業」においても、同様の制限があります。盲ろう児・者にとっては、日常生活や社会生活において外出時に通訳・介助員および同行援護従業者などの同行は不可欠です。

 厚労省では、2020年度に「雇用施策との連携による重度障害者等就労支援特別事業」を創設しましたが、利用できる自治体は非常に少なく、盲ろう者の働く機会がなく在宅生活を余儀なくされ、生活がきわめて厳しい状況に置かれています。

 このような状況を踏まえて、盲ろう児・者はじめ全ての障害者が目的によって制限されることなく、必要な支援を得て移動や活動ができるように、厚労省告示523号の利用制限部分を削除して頂きますよう、お願い申し上げます。

【事例】

・40代の弱視ろう男性が視力低下により、自力での通勤が難しくなった。70代の母親が片道1時間半かけて送迎しているが、長続きしない。母親が動けなくなったらどうしたらよいか、不安が大きい。

・30代の先天性盲ろう女性は、通常の手話や点字、文字での意思疎通が困難なため、一般就労が難しい。通訳・介助員派遣や同行援護が利用できないため、近くの生活介護施設に60代の母親が送迎している。施設入所させたいが、どこも待機状態。親亡き後の行き場がなく将来が不安。

・マッサージ業務で自営業の全盲難聴男性。在宅訪問や施設など出張の時の移動が困難である。不慣れな地域や場所では一人歩きができない。業務中の会話で聞き違いや聞き逃しなどで、トラブルが発生することもある。通訳・介助員派遣や同行援護が利用できれば、常時通訳が受けられて、安心して業務に集中できるので、質の向上にもつながる。通勤が可能となれば就職もできるかもしれない。3年前から市の障害福祉課に相談しているが、「盲ろう者の現状を理解した。新しい制度ををつくることを約束する。」といわれて期待しているが、具体的な進展はない。

・重度障害者等就労支援特別事業があるが、多くの盲ろう者が通所している就労継続支援B型、生活介護などの事業所は対象となっていない。そのため家族や事業所職員が送迎せざるを得ず、負担が大きい。また、施設内での活動場面では、十分な意思疎通支援が受けられないため、孤立してしまうことが多い。

・盲ろう児の特別支援学校への通学は、通訳・介助員派遣や同行援護が利用できないため、家族が送迎している。また、学校内での意思疎通支援が不十分なため、現場の教師の負担も大きい。

全国公的介護保障要求者組合(委員長 三井絹子)

皆様におかれましては、日頃より障害福祉にご尽力頂きありがとうございます。

私たちは、重度の障害があっても、施設や親元ではなく、地域で自立して生活するための介護保障制度を求めて、長年活動をしてきました。

1970年代、当時の厚生省が「介護が4時間以上必要なしょうがいしゃには施設を用意している」と公言し施設収容施策を進めていた時代に、施設の非人間的な扱いに耐えられず、「府中療育センター移転阻止闘争」で都庁前に2年間すわりこみ、その後何の制度もない中施設を飛び出し、命がけで介護保障運動を行いました。朝起きてから寝るまで、そして寝てからも、片時も介護者なしでは生きられない重度しょうがいしゃが、必死の思いで東京都と話し合い、1974年に東京都で「脳性まひ者介護人派遣事業」が創設されました。

それまで介護と言えば家族介護が中心で、家族が介護できなくなれば施設に入るという二つの選択肢しかない中で、家族にも施設にもたよらず地域で自立して生きるための介護保障制度という第三の道を切り開いたのが、24時間介護がなければ生きられない私たちの団体「全国公的介護保障要求者組合」だったのです。それは脳性まひの重度しょうがいしゃが立ち上げ作ってきました。1997年にこの東京都の制度が国の傘に入り「全身性障害者介護人派遣事業」となって全国に広がり、現在の重度訪問介護制度の基礎となりました。

障害当事者の強い思いを原点としたこの重度訪問介護制度は、当初からしょうがいしゃの「自立と社会参加」を目的としており、外出も含む生活全般を支え、地域での独立した暮らしを可能にする画期的な介護制度だったのです。

しかし近年、この制度の趣旨を踏まえていない自治体が、重度訪問介護を利用するしょうがいしゃに対して、「吸引や呼吸器などの医療行為がなければ24時間介護を認めない」などと、本来の重度訪問介護制度にはない規定を勝手に作ってしょうがいしゃを分断し、医療行為はなくてもすべてに介護を必要とする重度しょうがいしゃが介護時間を申請しても、そんなに介護が必要なら施設に入れと迫るなど自治体による誤った運用が横行しています。

また高齢者の介護保険制度の影響で、それまで障害制度で生活してきたしょうがいしゃに対して、65歳になったとたんに介護保険の対象として重度訪問介護を打ち切ったり、介護時間を削る自治体もあります。私たちは死ぬまで障害からは逃げられず、むしろ障害は重度化するのに、介護保険を強要され短時間の決まった枠に押し込んで命を脅かすような運用をされては、これまで必死に築いてきた地域での生活は崩壊します。

地域での自立生活が実現して初めて就労や就学、外出の話になりますが、まだ重度しょうがいしゃの多くは、地域で生きること自体が脅かされている現状があり、まず国はこの問題を早急に解決する責任を負っていると考えます。

障害者権利条約の勧告でも指摘された地域移行を進める上で要となるのは、地域で暮らすための介護保障の確立と、当事者の意思を受け止める国や自治体の人権感覚です。重度しょうがいしゃが、自分の意志で地域での暮らしを実現できるよう、重度訪問介護制度の趣旨にそった運用を自治体に徹底し、国は自治体が実施できるよう財政措置を講じてください。

次に、重度しょうがいしゃが外に出るということ自体、人の手を煩わせるからと、家に閉じこもることが多い中、重度訪問介護制度によって介護者と外出ができるようになりましたが、しょうがいしゃへの理解が進んでいないため、外出先でもハード、ソフトの両面で様々なバリアがあります。

例えば銭湯に入るときにも車いすだからと断られたり、入院をしようとしても慣れた介護者がいなければ体位交換も安全にできずコミュニケーションも取れないのに、病院側が介護者の付添を認めず入院ができなかったり、トイレをしたくても大型車いすで介護者と一緒に入れる車いすトイレがないなど、困ることは多々あります。また介護事業所やヘルパーから、そんなに遠くは行けないとかこんな時間に出かけるなんて非常識だなどと対応を断られることもあります。「働く」以前に、生活のあらゆる場面で、介護が必要な重度しょうがいしゃは、社会の無理解や差別の壁を前に、いつも我慢を強いられたり闘わざるを得ないのです。

その究極の差別が、この告示523号です。国が「社会通念上適当でない外出」などというあいまいな言葉を使って、飲酒や習い事、水泳やカラオケ、宗教活動、政治活動といった健常者なら普通にやれることを、自治体の恣意的な判断にまかせて制限させている、まさに国による人権侵害です。なぜ重度しょうがいしゃは政治活動や宗教活動、余暇活動をしてはいけないのか。自治体が勝手に線引きをして介護の範囲を狭め、人の手を必要とするしょうがいしゃからは、基本的人権や自己選択、自己決定権すら奪ってよいというのでしょうか。

さらに就労時や通勤に介護者を付けられなければ、即、命に関わります。重度であるほど、職場の人のちょっとした手助けでは足りず、熟練の介護者でなければ命を守れません。また雇い主がしょうがいしゃを雇うために、介護者の費用まで二人分負担するとなれば、ほとんどの職場は自分で動ける人しか雇えないので、介護が必要な重度しょうがいしゃの就労は不可能に近く、国会議員のような特別な場合以外、働ける職場はありません。これこそ差別であり、介護の必要な重度しょうがいしゃは、二重三重に労働から排除されているのです。やはり介護については福祉サービスである重度訪問介護を、どんな場面でも使えるようにすることで初めて、重度しょうがいしゃも介護が保障され安心して働けるという平等が実現し、偏見や差別をなくす一歩ともなります。

重度しょうがいしゃの介護は小間切れにして切り貼りできるものではなく、仕事をするときも勉強をするときも、遊ぶ時も病気をなおす時も、関係性を築いた介護者と二人三脚することで初めて実現可能となるのです。一人暮らしをする重度の知的しょうがいしゃも、コミュニケーションをとって関係をつくるのに時間がかかるので、意思決定支援を含むコミュニケーション支援や危険の回避、様々な場面で判断を助ける介護者を奪われてしまえば、社会参加の道は閉ざされ、社会から排除されてしまいます。

私たちの命と生活を支える重度訪問介護は、施設に追いやられた重度しょうがいしゃが、施設を出て、地域で人としてあたりまえに生きるため「自立と社会参加」を求め、命がけで50年以上かけて勝ち取ってきた制度であり、差別規定を残しておくわけにはいきません。

告示523号の経済活動や就学、社会通念上適当でない外出の介護を認めないという外出制限規定は、障害者権利条約に反するばかりでなく、憲法、障害者基本法、障害者総合支援法に違反し、歴史に逆行しています。

介護を必要とする重度しょうがいしゃへの差別をなくし、真の社会参加を推進するため、以下要望します。

  • 重度訪問介護を、日常生活、社会生活のあらゆる場面で使えるよう、告示523号の外出制限規定を、撤廃してください。
  • 国会は、介護が必要なしょうがいしゃに対する人権侵害をこのまま放置することなく、実態調査を行い改善してください。
  • 「自立と社会参加」を目的とした重度訪問介護制度の趣旨を踏まえ、個々のしょうがいしゃに必要な支給決定と正しい運用を自治体に周知徹底し、国はそれを可能とする財政措置を講じてください。

障がい当事者団体(右側)から国会議員に要望書を手交した